”そして父になれない”『チェインド』


チェインド [DVD]

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 未体験ゾーンの映画たち2014、五本目!


 9歳の少年ティムは、母親と映画に見に行った帰り道、タクシーの運転手によって誘拐される。母は惨殺され、タクシーの運転手ボブによって監禁されたティムはラビットと名付けられ、続く殺人の手伝いをさせられるように……。


 ジェニファー・リンチさんの新作! 最近、息子ネンバーグと娘ンチという呼び名を勝手に思いついたのだが、全然定着しそうにないなあ。


 怪物のようにでかくて太いヴィンセント・ドノフリオに誘拐された母子。母親は早々と惨殺され、九歳の息子はそこで監禁されて下働きとして働かされる……というお話。ドノフリオさんはしょっちゅう女をさらってきてはレイプして殺し、死体は地下室のさらに下に穴掘って埋める、というあまりひねりのないことをやっておる。
 冒頭、子供が監禁されてるところから始まり、時系列が遡って誘拐された日に戻る。さて、冒頭の時間帯に復帰したら、子供の脱出劇ものになるのか……と思いきや、そこからあっさり十年ぐらいが経過してしまうのであった……。
 ずーっと鎖でつながれて、ひょろひょろのもやしっ子のまま二十歳になった主人公。いい加減に情も移ってきたのか、ドノフリオが殺人が趣味の豚野郎の癖して父親風を吹かし始め、「おまえも将来のためには勉強しなきゃ!」とか言い始める。しかし何をするかと言うと、本を与えて「俺の死体解体を手伝うために解剖学を学べ」と、超利己的! で、彼にも女を殺させて自分の本当の仲間に引き入れようとするのであった。


 主人公の本当のお父さん(ジェイク・ウェバーさん!)は、捜索が打ち切られたところで諦めて再婚してしまっているのだが、代わりにドノフリオが父親的ポジションに収まろうとするのだな。意外な父子関係ものの様相を呈してくるあたりが面白いのだが、不器用な怪物ドノフーが一方的な情を抱いても歪みすぎで全然受け入れられませんでしたあ!
 途中にドノフーの過去なんかも明かされたりして(父親の命令で弟の目の前で母親をレイプさせられた)、実にオーソドックスに、登場人物少ない映画らしくメインキャラを掘り下げていく。
 さて、主人公は怪物によって新たな怪物にされてしまうのか?といういやな危機感のもと、後半は展開していき、実はこんな単純な話に意外な真相も隠されていたことまで明らかになる。


 それほど強烈じゃないもののスプラッタシーンもしっかりあるし、雰囲気あるセットや美術、名優の熱演も見られて、なかなか手堅くまとまった一本。飛び抜けたものはないけど、僕はわりと好きですね。しかしまあ、十年経っても同じブラウン管テレビ使ってるわりに、ぬいぐるみにデジタルビデオカメラ仕込んで撮影してたりするあたり、微妙に齟齬も感じたところ。あの撮影なんて、最後の展開のためだけだもんなあ。

サベイランス [DVD]

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