”清く貧しく無料提供!?”『鷹の爪7 女王陛下のジョブーブ』


 おごりで公開!


 人間のする「仕事」に憧れを抱いたジョブーブは、仕事を求めてある企業に入るが、追い返されてしまう。風采のあがらない中年男に助けられたジョブーブは、彼が最近始めたハンドドライヤーの調整の仕事を手伝うことに。だが、男は実は世界征服を目論む秘密結社の総統だったのだ……。


 前作『5』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130930/1380535609)は正直もうマンネリ感が強く、おまけの『6』の方が面白かったのだが、今回は『ハイブリッド刑事』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110125/1295879920)以来の無料上映。なぜ無料なのか、ということは『ハイブリッド刑事』の感想を参考にしていただけると幸いです。


 もうこの『鷹の爪団』というキャラクターで話をひねり出すのはそろそろ限界に来ていて、フロッグマンという人は実は王道のストーリーテリングをするがゆえに、どうしてもマンネリに陥りがちで、かといってこの絵では何回でも繰り返し見られる圧倒的な様式美があるかというと苦しい……というのが、まあ現状ではなかろうか。
 そこで、ゲストキャラクターとスポンサーを迎え入れ、鷹の爪団を狂言回し寄りのポジションに置いて、いつもとは違った物語を紡ぐ……というのはまったくの必然であろう。
 45分に絞ったシナリオでギャグも詰め込み、こんな設定があったとは初耳だったジョブーブのキャラクターと台詞回しも活かして非常にタイトに仕上がっていて、無料なせいかバジェットメーターもないという、いいことづくめな出来栄え。今後はもう大長編は作らずに、毎回この形式でいいんじゃないか、とちょっと思っちゃったね。もちろん、新アイディアがあるならばそれもありでしょうが……。


 しかし、世界征服からちょっとずれて「労働」に挑んだ鷹の爪団は、その貧乏さゆえに「清貧」の思想に着地するのだが、それはそれで本来ならばまっとうなことを言っているはずなのに、どうにも少々ずれて感じられる。博士がたとえ100円ショップで材料揃えたものにせよ、製品と技術の対価は相応に払われるべきだし、ジョブーブの特殊能力にせよ同じではないか。そこを「人々の笑顔」とか「人を幸せにする」とか聞こえのいい言葉で美化し、いくらバイト情報誌がスポンサーだからと言ってわずかな時給だけで満足しちゃうというのは、少々問題ではないか。まさにブラック企業によって体良く利用されている形骸化した理屈そのもののようで、必ず社会風刺を盛り込んできたはずのシリーズにしては、切れに乏しく感じられるところ。
 作中の黒鯰という会社の悪役の描き方が、まさに時代劇の越後屋レベルで留まっているところも物足りない。要は物語が「古い」のだな……。
 まあ無名でかつかつなところから一人でせこせこFLASHアニメ作ってきて、おそらくTO⚪︎Oシ⚪︎マズに搾取されて今も大して儲かってはいないであろうDLEからすれば、おいそれとそんなところに切り込んだら代表自身の立場においても内面においてもまずいのではないか、と深読みしてしまうね。それはもちろんタウンワークも似たようなもので……。