”その動画を上げたのは”『母なる復讐』


母なる復讐 女子高生強姦事件 [DVD]

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 未体験ゾーンの映画たち2014、三本目!


 高校生の娘ウナを持つユリムは、夫と離婚し新たな生活を始めようとしていた。転校先の高校で、男子学生のチョハンに恋心を抱いたウナは、彼に呼び出されて屋上へと向かうのだが、そこで待ち構えていたのは不良学生たちだった……。輪姦の末に病院へと運び込まれたウナ。ユリムは示談を求める相手方に対し、訴訟を決意するのだが……。


 これは韓国映画で、定番ぽい社会問題絡めた復讐ものということで、わりかし期待していた映画。


 高校入学したての娘が、同じ学校の学生三人にレイプされる。主人公である母親は示談に応じず裁判に臨むが、お定まりの偏見と証拠不十分によって、加害者は微罪に終わる……というところまでが前半。そこからいよいよ、邦題の『母なる復讐』が動き出す……のだが、再審のための証拠を集めようとしたら見つかって刺しちゃった……みたいな、どうも腰砕けな、やりたいことの不明瞭な展開が面白みを削いでいる。せっかく動画と言う加害者、被害者にとっての諸刃の剣である証拠品があるのに、うまく処理されていないし……。


 徹底的に法廷劇をやった『トガニ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120826/1345874382)がすでにあるだけに、同じく法廷ものとして理詰めで証拠固めをしていくか、邦題でも無理やり結びつけられている『母なる証明』のようにより情念を爆発させて復讐ものとして盛り上げて行くかどちらかでないと、主人公が必要以上に優柔不断か、あまり頭が良くないように見えてしまうのだよね。状況はどんどんのっぴきならなくなっているというのに、のんきさが目立ってしまう。


 作中のキャラとしては似ている母娘として一貫しているし、司法の前で立ちすくむ一つの無力さの表現ではあると思うのだが、犯人側はどんでん返しも含めてステロタイプの域を出ないし、パンチに欠けたな……。一番、ぞっとしたのは同級生の女の子のくだり。


 ただまあ実に重苦しいお話で、あれこれ考えさせられてしまう面はあるし、いささか情感に寄り過ぎながら手堅く盛り上げてくるので、そこそこは楽しめた。未体験ゾーンの中では面白い方であると思うよ。

母なる証明 [Blu-ray]

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