”悪いことしましょ!”『悪の法則』


 リドリー・スコット監督作!


 メキシコ国境で事務所を構える弁護士は、婚約者ローラとの結婚を控え、人生順風満帆。だが、ささいなことから欲望に憑かれ、実業家のライナーと共に、裏社会のビジネスへと手を染める。ブローカーのウェストリーは、メキシコの暗部について警告するのだが……。


 本国では大コケしたという今作ですが、豪華キャストの意味があるんだかないんだかわからない、なかなか難解な映画でありました。
 荒野をバックにわかったようなわからんようなことを言ってるブラッド・ピットは、同じリドリー・スコット監督作ということで、なんだか『テルマ&ルイーズ』のJ・Dがそのまま成長したかのような軽さが相変わらずあって、ああ、あいつも年は取ったけど変わってねえなあ、なんて思わされてしまった。


 果たして、同じ荒野を爆走する話でも今作のメキシコと、『テルマ&ルイーズ』のアメリカ南部では、絵面こそちょっと似ていても全然違っていて、それよりも異文化圏ということで、『ワールド・オブ・ライズ』の中東描写との方が近いのかな、とも考えたね。
 慣れない悪事に一回だけのつもりで手を染めた主人公の周囲で、誰もがこれがいかにリスクがあり複雑怪奇で謎に満ちているかを語り、事実、裏に潜んでいる存在は顔さえ見えてこない。『ワールド・オブ・ライズ』でマーク・ストロングさんがデカプーに語った「郷に入っては郷に従え」的テーゼをどこか思わせ、他者がそうでない論理でもって踏み込んだところで、翻弄されどツボにはまるだけだと語られる。


 ここらへんをいかにも小説的な会話劇で延々と続けるので、結構眠かったのだが、散りばめられ、言葉だけで想像を喚起させられた凄惨なガジェットが後半になって実際に登場してくるあたりの容赦なさは素晴らしかったね。もちろん、何か年を食って妖怪のようになりつつあるキャメロン・ディアスの股間が実際に画面上に登場することはなかったわけだが、首チョンパシーンの連発は最高でしたな。


 悲嘆の涙にくれるマイケル・ファスベンダーは『シェイムhttp://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120323/1332493929)以来の悲痛演技で、相変わらず泣き顔が似合う人だな、と思いましたよ。言われたことがいちいちグサッグサッと刺さってる感じがまたいいですね。この会話劇に相応しいキャストでありました。

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