"今日もいい絵が撮りたい"『パッション』


 ブライアン・デ・パルマ最新作!


 広告代理店のベルリン支社を任されているクリスティーンだが、目標はニューヨーク本社への復帰。新スマートフォンのプロモーションムービーを作った部下のイザベルから手柄を横取りし、復帰を取り付ける。だが、イザベルはいち早くそのムービーをネットで公開し、クリスティーンを出し抜く形で本社配属を決める。二人の女の争いは激化し、裏で卑劣な裏切りが渦巻く……。


 先日『ファントム・オブ・パラダイス』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130922/1379843117)の素晴らしさに酔った勢いで、この最新作も鑑賞。ロードショーで観るのは『ブラック・ダリア』以来か? 今作は『ラブ・クライム』という映画のリメイク作品だそうで、オープニングの二人の女の未来を暗示させるあたりは妙に締まった感覚。元は割とかっちりしたサスペンスなんじゃないの……と思ったのだが、そこはあのエルロイの暗黒感をまるで三文噺のようにアレンジしちゃったデ・パルマ先生。今回もいつものアレが後半に突き進むにつれて大爆発。


 いやはや、夢オチ! 双子オチ! レズネタ!を、ここまで臆面もなくやるのはもはやデ・パルマ先生だけ! やってはいけない、と言うか、考えてみれば別にやってもいいんだけど、それ以前に恥ずかしくて誰もやらないことを堂々とやるのが凄いね。
 『ファム・ファタール』を観た時は、「おまえ、もう一生これ撮っとけよ」と思ったものであるが、まさにその再現で堪能しましたね。デ・パルマしか撮らない、最高かつ最低の映画ですよ。


 途中、何か疑問に感じたか知らないが、出演の三女優が見事にデ・パルマ監督の要求に応えてますわね。女子校のイジメかよ、というようなレベルの低い嫌がらせの応酬、いちいちショックを受けまくる瞬間をわかりやすい変顔スレスレのアクトで見せる……。レイチェル・マクアダムスノオミ・ラパスということで、戦わずしてヒロインを交代した(ブロマンスだからそもそもお呼びじゃなかったが……)『シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120331/1333159527)の決着戦がここで! 尊大極まりない上司マクアダムスさんが、すぐに神経病みそうなラパスさんを猛攻撃!


 バレエのシーンも抱腹絶倒の出来で、それを画面分割でアリバイの表現に使うのも、ネタバレバレですげえ! アリバイ工作も、出て行くところも目撃されたら終わりだろ……という代物でびっくりしたのであるが、まあいいんですよ、ここらへんもそもそも夢かもしれないし……。


 『パフューム』の香る女こと、カロリーネ・ヘルフルトさん(名前からして香りそう)も良かったですね。二人の女の狭間で揺れ、その争いに翻弄される役回りで、彼女こそが本来、観客に近い立場にいるはずなんですが、今作では翻弄されたい翻弄したい監督の思い入れが色々と注ぎ込まれているので……「いい絵が撮れたわ」って、それはおまえじゃなくて監督の台詞だろ!

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ファム・ファタール [DVD]

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