"仮面の下に隠されて"『甘い鞭』


 大石圭の原作(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20090529/1243576452)を映画化!


 岬奈緒子は不妊治療専門の医師。だが、腕と実績のみならず美貌も評判の彼女にはもう一つの顔があった。「セリカ」……会員制のSMクラブに所属するM嬢。15歳の頃、奈緒子は隣家に住む男に拉致され、一ヶ月に渡って監禁され、陵辱の限りを尽くされ、男を殺害しその境遇から逃れ出た。そして現在、彼女をそうした生き方に駆り立てるものは何なのか? 


 なんだかんだ言って大石圭の小説も、三本目の映画化。『最期の晩餐』(原作『湘南人肉医』)、『1303号室』に続いてということになる。もう結構メジャーな作家になったのかな……。今、大人気の壇蜜を主演に据えて、まあまあ話題性もあったし、ヒットしたのであろうか。まあ大阪は某劇場での独占公開で、いいのか悪いのか、という感じであったが……。


 個人的に、大石圭の小説では他に好きなものがいくらでもあるため、なんでこれ?という感もあったが、やはり監督・石井隆の資質と合致した故の企画だったからかな。低予算ながら、思っていたよりもずっと迫力があって、SMシーンの臨場感もさすがの出来であった。原作の持つ「甘さ」が中和されていて、身体性の際立つシーンに仕上がっている。


 しかし、大石圭作品の中じゃストーリーの薄い部類で、あまり評価していなかったが、こう映画化してみると、監禁、殺人とSMショーのてんこ盛りで血まみれの傷だらけ、むしろ盛りだくさんに思えたから不思議であった。やっぱり映像化ってほんとうにいいものですね! 『処刑列車』とか『人を殺す、という仕事』とか映画化しちゃったらどうなるんだろう、という話でもありますが。


 やや心配していた壇蜜さん、台詞は下手だったものの、表情のオンオフの切り替えが上手い。医者として患者に対してニコニコしていた直後、一人になって素の表情に戻るあたりが、やっぱり芸能人として普段からオンオフを使い分けてる、言うなればキャラを作ってる人らしいな、と思いましたね。
 さて、角川ホラー文庫の既発作品が続々と壇蜜表紙で重版されてますが、この調子で全部壇蜜ヒロインで映画化してもいいんじゃないかなあ。まずはボコボコメイクで『アンダー・ユア・ベッド』なんかどうですかね!
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飼育する男 (角川ホラー文庫)

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苦い蜜 (光文社文庫)

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