"魔空空間を突破せよ!"『ワイルド・スピード EURO MISSION』


 シリーズもついに6作目!


 国外に逃れ、安息の地を求めて落ちついたドミニクたち。ブライアンとミアの間にも子が生まれるが、少しずつ望郷の念はつのっていた。そんな折、新たな強盗団に手を焼いたホブスが、ドムとそのチームに協力を依頼してくる。全員への恩赦と引き換えに要求を飲んだドムは、イギリスへと飛ぶ。新たな強盗団の中に、死んだはずの恋人レティがいることを知りながら……。


 オープニングが超ゴキゲンでしたね〜。前作(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110707/1309931365)ラストで言ってた「最後のレース」をやってるのかな?という勢いで爆走してたヴィン・ディーゼルポール・ウォーカーだったが、街中を突っ走ってたどり着いたのは病院! ジョーダナ・ブリュースター妹・嫁の出産に間に合った〜!というシーンでありました。海外にトンズラしてきても、やっぱり大迷惑体質の変わらない兄&旦那……最高過ぎるね! そして、


「あの部屋(産室)に入れば、おまえの人生は大きく変わる」


と、重々しく告げるヴィン。いやいやいやいやいや、すごいドヤ顔で聞いた風なこと言ってるけど、おまえも独り者で、子供なんかおらんやん……。いるよなあ、ずーっと独身の癖に、家庭とか子供についてまで偉そうに語っちゃうおっさん……おまえも何にも知らんやろ!


 ま、それはさておき、ポール・ウォーカーは産室に飛び込んで新生児とご対面。それと共にオープニングタイトルで、一作目、四作目、五作目の映像が流れる! うわーっ、ポール・ウォーカー若いなあ! ハゲはあんまり変わんねえや! ここは一気に上がったよ。『ハートブルー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120711/1341967157)のリメイクみたいでどうってことない映画だった一作目も、なんか重要だったような気がしちゃうもんなあ。


 そんなこんなで平和なんだけどなんか物足りない生活をしていたヴィン・ディーゼルたちのもとに、敵の組織に散々やられたドウェイン・ジョンソンが助けを求めてやってくる。で、敵チームの手際良いアクションの前に一敗地に塗れることになるのだが……。守る側でありながら、ほとんどオフェンスなんじゃないのという「攻撃的ディフェンス」を展開するホブス=ドウェイン・ジョンソンと、そもそもがオフェンス側で最大の力を発揮するドム=ヴィン・ディーゼルのチームでは、相性がいいようで良くなかった感じ。このドムのチームを初手からディフェンスに使おうという発想がずれている。地味な行動も、すべて後半の大逆転のための布石、というぐらいがハマるのだが、妙にメロドラマチックな展開が入ってしまったがために、盛り上がるポイントがずれた印象。
 ロック様とジーナ・カラーノが登場するも、各大陸でフルボッコにされる、というあたりをもう少し尺取ってやった方が、後々の展開を考えてもうまくハマっただろう。そこから反撃を開始するためにヴィン・ディーゼルチームが呼ばれ、一気呵成に反撃……ということで良かったんじゃないかな。


 というわけで、途中は結構ダラダラして眠かった。シナリオとしては前作の方がまとまってたなあ。仲間が集結してくる展開もワクワク感に欠けたし、『君への誓い』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120603/1338698187)みたいな記憶喪失恋愛話はいまいちそぐわなかった感じ。


 とはいえ、戦車の辺りから再び盛り返し、クライマックスの大決戦で充分にお釣りが来た感じでしたね。領空とかそういうことを一切無視して飛んできた輸送機を車で追いかけてバトル、という異常なシチュエーション。最後の滑走路が『グランド・マスター』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130609/1370788635)の汽車とタメ張るぐらいに長かったが、それよりも敗れ去ったものはみんな後方に飛んで行き、死体さえ残らないあたりが印象的であった。どこかファンタジックというか、そういった法則に支配された魔空空間のような異世界のように思えた。


 内部では大格闘戦が展開される。ポール・ウォーカーのピンチに頭からミサイルの如く飛んで行くヴィン・ディーゼルにバカウケ。ハゲは武器だ! さらにダブルインパクトまで炸裂するにあたって、もう何とも言えない満足感が生まれて来るのである。
 『エージェント・マロリー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121010/1349858686)ことジーナ・カラーノはやはりでかい! ミシェル・ロドリゲスとじゃ全然身体の密度が違うわ。あの迫力あるタンクトップ女が、華奢に見えるもんな。まあ普段格闘技見ない人には意識するほどの差に見えないだろうが、あれは組んでも押しても相当力の差が出るレベル。それだけに、二度の対決における転換は効いてたね。


 面白いんだがやはり強引さと蛇足感が漂い、突き抜けたような幸福感で締めた前作のラストを思い起こすと、続けたいがあまりにちょっともったいないことをしたな、という感は否めない。戦いが、冒険が続くということは、さらなる悲劇もまた巻き起こるということを、今作は示したね。まああのキャラとか死んじゃうのは、死んだはずのレティを平然と生き帰らせたことへのエクスキューズみたいなものだと思うが……またファンの声が大きければ復活できるかもね?


 エンドロールのサプライズも含めて、とりあえずやっておけることはみんなやっておこうというサービス精神が伺えたところは良かったですよ。次回はなんだろ……『JAPAN MISSION』かな? 配給は他の国のシーンの方が多くても、気にせずこのタイトルで行けばいいのではなかろうか。そして、ハンの弟子として、今度こそルーカス・ブラック君の復活を……!