"いつだって締めは俺に任せな!"『ラストスタンド』


 シュワちゃん復帰作!


 国境の小さな街で保安官を勤めるオーウェンズは元刑事。町民が地元チームの応援で大半留守にする中、静かな週末を過ごすはずだった。だが、FBIからの連絡により、時速300キロのスーパーカーで脱獄した麻薬王が迫っていることを知る。部下が先行し、国境に橋をかけようとしているのを知ったオーウェンズは、部下や町民と共にそれを阻止しようとするが……。


 長きに渡る政界でのお勤めから、ついにシュワルツェネッガーが映画に復帰! いやまあしかし……老けたなあ……これじゃ皺ルツェネッガーだろ……。もう脱ぐこともできないし、身長も縮んだというか無闇に大きく見せる演出をしていない。作中でもさすがに年をネタにしており、完全にアンチエイジング映画。


 キム・ジウン監督が本当に「シュワルツェネッガー主演作」「復帰作」として手堅い仕事を見せている。悪役や脇役にそこそこ豪華キャストを集め、各自に見せ場を割り振り、キャラ描写も類型的ながらちゃんとやっている……のだけど、最終的に全体の印象を思い起こせば、必ず浮かんでくるのはシュワである。ピーター・ストーメアの怪演も、フォレスト・ウィテカーのお仕事っぷりも、エドゥアルド・ノリエガの悪役も、ジェネシス・ロドリゲスの乳も、皆それなりにいい仕事をしているのだけれど、全てが最終的にシュワちゃんの引き立て役になるように設計されているのだ。

  • 副保安官Aの人生の危機!→シュワが励ます!
  • 副保安官Bピンチ!→シュワが助けにくる!
  • 副保安官C反撃も及ばず!→もうダメかと思ったところでシュワ参上!
  • ピーター・ストーメアの大見得!→シュワがとどめを刺す!
  • フォレスト・ウィテカーが「無理だ!」→シュワが不可能を可能にする!


 その流れに乗っかって行けば、まずまず楽しめる。これを「説得力ねえよ、ご老体」と思うようでは、もうシュワ映画を見ること自体がきつかった、と言うしかないが……。最後の仁王立ちシーンが合成まるわかりでガクーッとなってしまったが、銃撃からカーチェイスにつなげ格闘戦で締めるあたりは非常に安パイですね。格闘シーンもプロレス技のシュワと、柔術を駆使するノリエガさんがオールドスタイルとニューカマーという対比になっているね。


 ハリウッド初進出でここまで素材を生かし、シュワの現在の魅力を引き出し切って見せたキム・ジウンは素晴らしい……と言いたいところだが残念ながら全米では大コケだったという話。シュワのスター映画をそれらしく作ってダメだったんだから、そりゃあシュワにもう興行力がないということで、彼のせいでは全くないんだろうけど、せめて内容の方はちょっと評価されてて欲しいよね。R-15描写がウケてれば、今後じわじわ評価されるかも……。


 300キロを超えてしまうスーパーカーだが、それに最終的に立ちはだかったのは田舎のとうもろこし畑であった、というあたりのローテク感も良いね。しかし、途中の突破は部下使っててズルいなあという感じであったし、ああいう暴走を止める十八番である道路に敷くトゲトゲをどうやって通過するかと思ったら、いっさい出てこなかったのも残念であった。


 物足りないところも多々あるが、それを飲み込まないと楽しめない今のシュワ映画の、現時点での一つの完成形であろう。ヴァン・ダムで言うと『ハード・ソルジャー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121127/1354017953)かな。キャリアの末期にこういう作品を作ってもらえるということは、非常に幸せなことであると思うよ。でもコケたわけですけどね……。

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