"同窓会は二次会へ! 出来上がれ!"『エクスペンダブルズ2』

 
 筋肉祭映画!


 東欧に墜落した輸送機に積まれたデータの奪還指令を受けた、バーニー・ロス以下、エクスペンダブルズ。だが、謎の男ヴィランにデータを奪われ、仲間の一人を失う。怒りに燃えたバーニーは、仲間と共にヴィランのアジトを襲うことに。ヴィランはデータに隠されたプルトニウムの在処を元に、世界のバランスを崩し大金を得ようとしていた。史上最大の戦いが始まる。


 二十数年越しで同窓会が開かれたとしたら、いったい幹事や参加者はどういう心持ちになるであろうか。第一作『エクスペンダブルズ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101019/1287461649)において幹事役となったスタローンは、きっと色々なことを考えたのではないかと思う。自分たちが存在する意味、今こうして集まった意味を語り、これまでの功績とそれを懐かしむ気持ちを歌い上げ、さらに老いた自分たちがこれからいかにしてアクション映画に関わり貢献していくかということを決意表明し……。集まったキャストへの見せ場の割り振りや、ジェイソン・ステイサムを弟分に据えての闘魂伝承、ドルフ・ラングレンのカムバックに象徴される丁寧な脚本にスタさんの、この同窓会を成功させよう、意義深いものとしよう、という思いが切々と滲み出ていたものである。


 その同窓会たる前作を経ての今作は、例えて言うならば二次会に当たるわけだ。……いい加減に酒も入ってきたのであろう。真面目な話は……もういいじゃん! 後は無礼講でぱーっとやりましょう! かくして出演者たちはどんどん地を出して「いつもの自分」となっていくのである。あの頃は良かったなあ、ほらあの映画とかさあ、あの役とかさあ……。
 話はどんどんメタに回顧的になっていき、もともと80年代アクションとは文脈のずれていた人たちは次々と去って行くわけである。語り担当だったミッキー・ロークは二次会の前に帰ってしまい、アジアからのゲストだったジェット・リーは乾杯だけしてお先に失礼してしまうのである。ドニー・イェンは二次会からとか余計ついていけないわ〜と最初から断ってしまう。幸い、ここから参加のヴァン・ダムはノリノリで、途中でチャック・ノリスさんが顔を出してくれた時には大盛り上がり。一次会では自重して大人しいめだったシュワとウィリスも乗ってきて爆発し、宴はたけなわとなったのでした。


 そういうわけで、前作より中身なく内輪ネタ化していった内容にどこまで乗っかれるか、は、その残ったキャストの文脈にどこまでついていけるか、によるわけですね。まあその点、スタさんやシュワなんて超メジャースターでもあるわけだから、多くの人がお祭り映画として楽しめるのではないか。


 さて、噂には聞いてたけれど、ジェット・リーが即退場してしまう! 今回は「仲間の仇を討つ」というストーリーが一応あると聞いてたのでてっきり殺されるんじゃないかと思って、ちょっとハラハラしたわ。代わりに「オレ、この仕事が終わったら結婚するんだ……」とベタな死亡フラグをガンガンに立てまくって死んでいったのが、ソーのロキじゃない方の弟ことリアム・ヘムズワースであった。まあでも『ハンガー・ゲーム』よりかずっと光ってたよ。もっと新米臭を漂わせるかと思ったら、そこそこ腕利きだったし。


 今回、消耗品軍団はどうもヘタレていて、怒りに燃えてるはずなのに迫力がないのはまあ二次会でゆるい雰囲気だからと言うしかないが、その代わりまだ飲み疲れてないヴァン・ダムが引っ張っていく。お話上は常にスタさんチームの上を行ってて、助っ人の助けを受けてやっと逆転に成功するという流れ。『レプリカント』あたりから悪役演技に凝ってるヴァン・ダムは、今回も良かったね。自身の主演作ではもはや繰り出すとは限らない回し蹴りも炸裂させる。
 そのライバルのはずのドルフは、すっかりコメディリリーフになってしまった! やっぱりドルフさんはヴァン・ダムと対決してなんぼだよなあ。前作のクートゥアのように、スタさん大ピンチのところで「オレに任せな」と出て来て欲しかった。いや、お約束通りヴァン・ダムにのされてしまい、その後スタさんが挑む、という展開でも良かったかな。
 新鋭スコット・アドキンスも、ステイサムとの「……子供?」というようなしょうもない意地の張り合いを展開し、無理矢理因縁対決に仕立てちゃったところが良かったですな。やっぱり悪役が立っていないと。


 個人的にハイライトはチャック・ノリスかな〜。荒野のガンマンのテーマに乗って、まるで仙人のごとき佇まいで登場する。一応スタさん以下他のキャラクターは戦いに際しても段階を踏むわけです。敵味方の人数がこれだけ、武器がこれだけあって、作戦はこうだからこうやって勝てるのだ、というところを勢い任せながら一応過程も描く。だが、チャック・ノリスに関してはそれが一切ない。チャック・ノリスが出て来た瞬間、敵は全滅するのだね。登場時にすでに勝利は決定されていて、もう「概念」として強い存在になっている。自ら口にするキングコブラの「チャック・ノリス・ファクト」を、作中で完全に体現しているのだね。まあ二回目の登場もまたテーマ曲かけたのには、さすがに笑ってしまったがね。


 まあまあ観てる間は面白かったけど、やっぱりみんな年取ったね、ということも強く感じた。もっと脂ぎってた頃の作品を見返したいな。もちろんこう思わせる効能があるところもまた、良いお祭り映画なのである。

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