"辰年の男たち"『コンシェンス 裏切りの炎』


 香港ノワール・フェス、三本目!


 妊娠中の妻をスリに殺された過去を持つ刑事マン。チームで娼婦殺しの犯人を追う中、本庁の刑事ケイに彼の部下の携帯電話の盗難事件への協力を要請される。どこか通じ合うものを感じた二人は、互いの事件に協力しあうように。娼婦殺しの容疑者に、数日前の警官の銃の強奪事件が浮上したことで、マンは武器商人と容疑者の取引現場に乗り込むのだが……。


 『密告・者』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111106/1320573887)、『ビースト・ストーカー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120504/1336039985)に続き、もはや安定のダンテ・ラムブランドがやってまいりました。これで観るの三本目ということで、演出面に関してはそれほど新たな引き出しも出てこなくなってきた感もあり。出てくるガジェットも過去に囚われた刑事と犯罪者ということで、正直「またかよ!」と思わないでもなかったりする。あと、高いところからぶら下がったまま取っ組み合うところとか、前も観たなあ(笑)。
 が、だからと言ってネタ切れというわけでもないのだよね。同じ警察内部の腐敗でも、まだまだ描くことはあるし、シチュエーションが尽きることもない。オープニングのストップモーションが印象的で、それが全て後半につながってくるあたりも格好良い。


 ヒゲモジャで凄腕の暴走刑事を演ずるレオン・ライと、同じく凄腕ながらまだ抑制の効いている本庁の刑事リッチー・レン。同い年で似たところもある二人を対比させるが、やがて二人が対照的な道を歩いていることも明らかになる。妻殺しの犯人を追う中で暴力も辞さない男と、組織に裏切られたことで良心を捨てた男。
 リッチー・レンと組んでいる「帽子の男」が凄味があって、暴虐極まりない計画の数々も彼が実行しているのだが、組んでいるリッチー・レンもその結果に対して眉一つ動かさないような冷徹さを持っている。それに対し、必要以上に激昂しているようなレオン・ライ。どうして二人はここまで違ってしまったのか、そしてそれでもなお共通する部分が残るのはなぜなのか、双方の置かれた立場など考えていくと面白い。


 さて、もちろんバイオレントぶりも売りですが、この監督のその期待にすべて応えるようなサービス精神も素晴らしい。死んでしまう人はほんとに無惨に死んでしまう! フラグを立ててきっちり回収する一方で、その逆に唐突かつ残酷にお亡くなりになるキャラも多数。特にコミカルな部分を担当してる人がやられてしまうと、ショックも倍ですな。
 ああ、こういう小道具が出た以上は当然こうなるだろうなあ、こういうものを着てしまったら絶対こういう運命を辿るであろうなあ、というお約束も決して外さない。当然、妊婦が出たら、史上最悪のシチュエーションでの出産が待っているわけで……(笑)。


 今回の抱き合わせ企画、リッチー・レンが三本中二本出演ということで、彼のためのフェスのようであったなあ。特にまったく違うキャラクターであるだけに、見どころも多し。