"そのバトン、確かに受け取った!"『強奪のトライアングル』


 香港ノワールフェス、二本目! 三監督によるリレー映画!


 タクシー運転手のファイは、友達のエンジニアのサンや古物商人のモクら、金に困っている仲間に強盗の話を持ちかける。すでに裏社会に当たりをつけていたファイだったが、二人は首を縦に振ろうとしない。集まった酒場で、そんな彼らに声をかける謎の老人がいた。老人の置いて行った名刺と金貨に、ただならぬことの匂いを感じる三人だが……。


 世にリレー小説というものがある。ネットでも複数の書き手によるそれらが散見されるが、その醍醐味はやはり、序盤の書き手による筋やキャラクターが、あとに続く書き手のエゴによって歪められたり、あるいは全くの新キャラが不意に活躍し始めたりという混沌ぶりにあるのではないか。
 三人によるリレーの三番手に来て、大筋がだいたい固まっててオチをつけることだけを要求されているようなポジションだと、硬直した頭ならばもう小さくまとめることしかできなかろう。だが、書き手のエゴが強ければ、作品全体のトーンまでも変えてしまうような急展開が待っていたりする。
 それは、この香港を代表する巨匠三人が揃ったとて、例外ではなかったようだ……。


 犯罪劇にややオカルト要素を絡めた前振りを、ツイ・ハークがまずはやって見せる。冒頭の看板の大写しのシーンなど、いかにもツイ・ハークで、うわあやってるなあ、これは演出のリレーも色々と楽しめそうな予感。さらにリンゴ・ラムがサスペンス要素を手堅く引っ張り後半につなぐ! さあラストを締めるジョニー・トーは……ここで遊びだしたあああ!
 突然登場したラム・シューの異様なテンション! 舞台設定が急に変わってド田舎の村に! これまた突然登場の交通巡査のおっちゃんが大活躍! なんだこれは!
 結局のところ、三監督ともやっぱりバラバラで、ジョニー・トーがそこまでのメインキャラを急に独自のテイストで扱い過ぎなので、とんでもない怪作になってしまった。敵役のラム・カートンの性格が毎回変わって行くあたりが強烈! 


 ラストの銃撃戦、欲望を捨てると全てが俯瞰して見える、という皮肉でまとめ、オカルト要素にも少々矛盾する感ありながらオチをつけて見せたあたりはさすがに上手いな〜と思ったが、びっくり仰天のテンションだったなあ。正直褒める気はしないんだけど、これはこれで貴重な体験をしたという気持ちでいっぱいです。