"楽園のなり損ないで"『バットマン・ビギンズ』『ダークナイト』
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ゴッサム・シティ。犯罪により両親を失ったブルース・ウェインは、正義とそれを為す力を求め、ヒマラヤの奥地に潜む「影の同盟」に所属する。組織の幹部であるデュカードに師事し忍びの修行を続けていたブルースだったが、「影の同盟」の目的は破壊と粛清だった。対立し、首領であるラーズ・アル・グールを倒したブルースは、ゴッサムに舞い戻り、自らのトラウマの象徴である蝙蝠に身をやつし、「バットマン」として立ち上がる(『バットマン・ビギンズ』)。
「影の同盟」との戦いから半年。ゴッサムに現れた神出鬼没、正体不明の犯罪者ジョーカー。街のマフィアを手玉に取り、警察やバットマンさえも嘲笑う怪物。光の騎士と呼ばれる公明正大な検事デントとバットマン、ゴードンの三人は、一計を案じジョーカーを捕らえようとするのだが……(『ダークナイト』)。
『ビギンズ』は劇場で観るのは初めてだったので、結構新鮮だったな〜。覚えてないところも多かったし。丁寧過ぎるぐらい丁寧にブルース・ウェインの生い立ちと、新バットマンのルーツを描く。もっとかったるいかと思ってたが、秘密基地と小道具を作り始めたあたりから、それが楽しくてニヤニヤしてしまった。俺もお金持ちになりた〜い! チャンベール先生があの神経質フェイスで材質の心配などしながらスーツ作りにオタク的に励むあたりがものすごくはまっていて、いちいち茶々を入れるマイケル・ケインがまた楽しい。さらに実際の製作はモーガン・フリーマンということで、ここらへんの男が寄せ集まってゴチャゴチャイチャイチャやってる感じは後の『インセプション』にも通じるところ。
初見の時は「ケン・ワタナベ=ラーズ・アル・グール」という悪役が出るよ〜という程度の予備知識しかなかったため、あのババーンと黒幕が正体を現すシーンには、ベタなのにびっくりしてしまったし、怪人は一人しかでないと思っていたためチャンベさん以上に神経質フェイスでケイティ・ホームズより身長低い医者が急にマスク被ったとこでは、ギャングのボスとシンクロする勢いでうわーっとなっちゃったね。キリアン・マーフィ、今じゃ大好きですよ。
ひどいひどいと言われるアクションシーンの撮り方は、本当にひどかった(笑)。カット切りすぎて何やってるのかわかりにくいったら。一方で井戸の底へ降りるシーンやエレベーター、何層にもなったモノレールのスケール感など高低差の表現は迫力があって、人間得手不得手があるもんだなあ、と感じいってしまったよ。
オペラのシーンや、妙に古ぼけた街並み、ゴシックなデザインのモノレールなど、美術にいかにも「楽園のなり損ない」のような雰囲気が漂っているところも好みで、滅ぼされる運命の退廃の街の雰囲気が出ているところも好きだ。モノレールがぶっ壊れたら、続編では途端にただのシカゴになってしまったがな!
印象に残る決めどころは全部台詞言うシーンで、全然見せ場らしい見せ場のない映画なんだが、陰気なチャンベールさんを眺めてるだけでハッピーな気分になれる映画。
『ダークナイト』は4年前に劇場で観た時の方が面白かったかな。やっぱりキャラクターの変転、特にデント=トゥー・フェイスの変化の過程が見所なので、筋を知っているとちょっと途中は眠かった。変化前のデントにあまり魅力を感じないし、レイチェルが彼を選ぶのもブルースとの対比で理屈としてはわかるのだが、心情的にはピンと来ない。
しかしながら、中盤のジョーカー無双からはテンションもうなぎ上り。ただのシカゴになったゴッサムはより現実世界を想起させ、そこでヒーローに対し絶望を突きつけ続けるジョーカーと、犠牲になったレイチェル、変心したデント……。バットマンとゴードンの決断と選択。
そしてやはりヒース・レジャーの熱演が素晴らしいね。病院のシーンは何回観ても面白い。
そんなこんなで復習を終え、『ダークナイト・ライジング』を残すのみ。舞台は8年後のゴッサムへ……!
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