"うわっ、……私の記憶、飛び過ぎ……?"『君への誓い』


 1日サービスデーに鑑賞。


 幸福な結婚生活を送っていたレオとペイジだが、ある日、交通事故にあい、ペイジが4年分の記憶を失ってしまう。結婚以後の記憶も全て失われており、夫と認めてもらえず戸惑うレオ。記憶が戻る事を期待しつつ、元の生活を取り戻そうとするレオだが、ペイジはプレッシャーを感じ、追い込まれていく……。


 レイチェル・マクアダムスはなかなかいい位置につけてるよなあ。こういうラブロマンスものを軸に、『ホームズ』みたいな大作や『MIP』のような作家性の強い作品にも出始めている。まだ化けそうな感じこそしないものの、どっかで当たり役を取るかもね。


 さて、記憶喪失ものということだが、実話がベースということもあり、これはあまりかっ飛んだ話にはならないであろうという諦めの感覚がある一方、明らかな「いいお話」にも着地しないシリアスさもあるのではないかという期待もあり、ほどよいバランス感覚。だからこそ、冒頭の事故シーン、スーパースローモーションでレイチェル・マクアダムスがフロントガラスを頭突きで粉砕するシーンは、ちょっと予想の斜め上だったので爆笑してしまったよ。カーセックスしようと率先してシートベルトを外してたせい、というのもまた馬鹿馬鹿しくて良いじゃないか。それに車止めるの道の真ん中すぎだろ!


 記憶を失っても同じ人間だからすぐ元通りになれる、という夫チャニング・テイタムの目論みはあえなく打ち砕かれ、何もできないもどかしさを抱えて耐えることを余儀なくされる。彼自身によって語られる、一瞬一瞬が恋愛や関係を支えている、というテーマはちょっと面白く、その偶発的な一瞬を再現する事は叶わぬゆえに、事態も難航していく。家庭生活に代表される「今までと同じ事」は、その一瞬一瞬があってこそで、それがなければ形だけなぞってもうまくいかない。


 妻側も記憶が4年分吹っ飛んだことで、それだけ逆行したような形。ただ、それがちょうど抑圧的な両親から脱却し始めたとば口であったことが、その後の突破口になる。関係は良くなったりやっぱりうまくいかなかったり、一進一退を繰り返すのだが、その過程でヒロインは、両親に抑圧されていた自分を主人公によって解放された過程を、完全に同じではないにせよ追体験する。
 チャニング夫側のもどかしさにこちらも共感するのだが、一見、功を奏さなかったかのように見えた行動が後々効いてきたりする展開は、なかなか面白い。


 しかしサム・ニールパパは登場した瞬間に、こりゃあいやな奴役に決まってる!と思ったらやっぱりそうだったな〜。まあお父さんがいやな奴でも、時に許す事も必要ですよ! でも言う事まで聞く必要はないよ! という、ある意味家族関係を否定しつつ、適切な距離感があることも示し、抑圧への決着はつく。すんなり落ちがついたような気持ちの良さはないのだが、このままならなさこそが実話ならではで、リアルな恋愛や夫婦、人間関係の着地点を示したのではないかな。そういう点では大人の映画でもあったし、もう少しとんがったところも欲しかったものの無駄のない佳作であった。

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