"これがあの秘技のルーツだ!"『イップ・マン 誕生』


イップ・マン 誕生 [Blu-ray]

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 ドニーさんの出ていない前日談!


 伝説の男、その知られざる幼年期! 詠春拳道場に義兄と共に預けられ、めきめきと頭角を現すようになった少年、イップ・マン。青年に成長した彼は、香港へ留学し、そこで詠春拳の継承者である老人リョン・ビックと出会い、新たな技を授かる。道場に残りその振興に力を尽くす義兄ティンチーと共に、前途は洋々であるかに思えた。だが、戦争の危機が迫ると共に、日本軍の不穏な影がちらつくように……。


 シリーズの大ヒットを受けて作られた作品、ということなのだが、サモ・ハンやルイス・ファンが別のキャラクターで出演しているといういい加減さ。つまりイップ師匠は一作目でかつての兄似の道場破り(後に魚屋)が現れたのでちょっと微笑ましく思い、二作目で洪家拳の師匠が昔の自分の師匠に似てたので懐かしく感じたりしていたのだろうか……。
 そんなこんなでややこしいところに目をつぶれば、あとはよく整理されている。中盤まで、丁寧にイップ・マンのルーツを語り、生い立ちから妻との出会い、詠春拳の習得、新たな師匠との出会い、新技への開眼など、順繰りに丁寧に語る。かといって単調かというとそうではなく、サモ・ハンVSユン・ピョウの詠春拳による手合わせなどオールド・ファン感涙ものの場面あり、本物のイップ・マンの息子さんなども登場。一・二作目につながる展開も多数盛り込んで飽きさせない。ふんだんに用意された詠春拳VS詠春拳の同門の手合わせシーンの競技的なスタイリッシュさ、中盤の二つの流派の詠春拳の対決と対比、さらに柔道(?)や日本の剣術(?)との異種格闘技戦的な攻防、と、ファイトシーンも多彩。


 デニス・トーも技の切れ味が素晴らしいし、野性味はないものの微妙に不穏な顔つきが良い。実は悪役とかもできそうだな。しかし個人的には久しぶりに観たユン・ピョウに胸熱! 実直で昔気質で、お師匠に忠実な故に頭が固い、でも悪い人ではないというキャラクター。心の汚れた僕は最初の薬湯のシーンで毒でも盛ったのではと邪推したが、サモ・ハン師匠は太り過ぎで心臓が悪かっただけで、あくまでユン・ピョウは忠実な男であった(すいません!)。クライマックスで、彼の持ち上げる椅子や机がどんどん大きくなるあたりに感動。怒りと、お師匠への愛と責任、火事場の馬鹿力的なものを表現してるのだよね。


 ストーリー的には突っ込みどころも多く、また変な日本人が出て来るのだが、武術の志を解さぬ外国人との戦いというシリーズに通底されたテーマを忠実になぞった結果でもあるな。序盤の香港留学で英国人との絡みもやってるのも良し。しかし、イップ師匠は英語が出来たのか……。ボクサーと戦ってた頃は、もう完全に忘れているように見えたが、ヒアリングぐらいは出来ていたのであろうか……。


 『星空』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120325/1332664607)の子もチョイ役で出ておったし、全体には大満足な出来であったよ。

イップ・マン 序章&葉問 Blu-rayツインパック

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