"あなた、どっちを愛してるの?"『二番目の女』


 大阪アジアン映画祭2012(http://www.oaff.jp/)で鑑賞、二本目! ガーデンシネマの最終日だったがこれもほぼ満席だったね〜。


 舞台女優のフイパオは役作りに悩み、壁を打ち破れないでいた。恋人で同じ舞台に出演するアナンをつなぎ止めるためにも、今度の舞台で下手を打つわけにはいかない。だが、彼女の知らぬ間にアナンは、双子の姉であるフイシャンとも密かに通じていたのだった。公演直前に病気になったフイパオの代わりにフイシャンが舞台に立った日から、双子の運命は残酷に回り始める……。


 スー・チーが二役ということで、盲目の母の看病をする物静かな姉と、劇団で舞台女優を務める妹の二人を演じる。最初は髪型や服装で区別をしているのだが、ある事件を切っ掛けに二人が入れ替わるシーン以降、その区別も曖昧になり、観客もともすればどちらがどちらなのか迷うように。


 一人の男を巡る姉妹の愛憎が、そのまま妹の演じている、かつて亡くした女の霊とそれにそっくりな女の間で揺れる男を描く舞台劇と、そのまま重なる。割合序盤にその劇……広東オペラのストーリーの結末は見せてしまうので、あれっと思っていたのだが、後半に再び訪れるそのラストシーンでは一捻り加えた展開に。


 フラッシュバックを多用したサスペンス演出も効果的に挿入され、ヒロインの孤独感と不安感を強調しつつラストを盛り上げる。謎解き役があまりメインストーリーに絡まないのが難点と言えば難点か。中盤は同じような演出が多く、少々もっさりしてるな、とも感じたのだが、クライマックスの怒濤の盛り上がりで充分にお釣りが来た。舞台と現実との二重構造、三角関係、もう一人の自分との争い、役者としての矜持など、ご存知『ブラック・スワン』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110512/1305173515)を思わせる内容でもあり、かの作品の圧巻の迫力にも迫るものであった。


 ティーチインでも色々と質問が出た(僕もしました!)けれど、監督は女性ならではの孤独感を描きたかった、ということで、この広東オペラという題材は、もともと舞台も好きだったけどそれを描くために適した素材であると思ったとのことである。主演のスー・チーには、撮影前に今は姉の気分か妹の気分か聞いてから始めたなど、二役ならではの裏話もあり。ついでにモテ男の優柔不断っぷりも露骨なまでに描かれ、ショーン・ユーのいかにもなキャラクターにも共感が寄せられていたのであった……。

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