"僕は妻のために変わる!"『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』


 ポール・W・S・アンダーソンミラ・ジョヴォヴィッチの最新作!


 世界を揺るがす秘密兵器であるダ・ヴィンチの飛行船の設計図を手に入れるため、ベニスで大立ち回りを演じた三銃士。だが、手引き役のミレディの裏切りにより、設計図を祖国フランスの怨敵、イギリスのバッキンガム公に奪われてしまう。その一年後、銃士になることを夢見て、パリへとやってきたガスコーニュ生まれの青年・ダルタニアンは、やってきて早々にその三銃士と決闘することに……!


 心配してたよりずっと『三銃士』だった。ダルタニアンが旅立ち、謎の男と遺恨を作り、パリに来て早々三銃士全員と決闘する羽目になる……って、この流れ、原作通りじゃないですか! もっと逸脱しまくるのかと思ってたので、ここらあたりをやってくれただけで何か真面目な映画であったような気がして来た。もっとも、その後の展開はダルタニアン+三銃士VS護衛隊の4対5の決闘になるはずが、映画では4対50になってたけどね! でもダルタニアンが一人で隊長を打ち負かすところなんかは原作通り。


 2Dデジタルで観たのだが、この辺りは3D効果狙って撮ってるんだろうな、というところは散見された。オープニング、都市の空撮から入る辺り『バイオハザード4』と同じで、またかよ……という3D演出。とはいえアクションシーンは、カメラが横移動しながら回転する動きを撮る構図が、武器アクションにはまっててなかなか良い。今回は飛行船のシーンなど、制約が大きくなってる『バイオハザード』シリーズよりも自由にやれた感が強く、やってるのはいつものことでもそれなりにバリエーションがあるので退屈しない。
 ちゃんとアクションとストーリーと合致させようとした意識も見えるし、クライマックスもロシュフォールのダーティ剣術は良かったな。序盤のダルタニアンの訓練シーンからつながってるし、細身の剣だから急所を突かれない限り死には至らないという特性を利用した殺陣になっている。


 舞台は中世フランスなんだけど、相変わらず汚しのない美術で、画面が隅から隅まできれい。だからかえって現代映画らしく、ある意味安っぽく見える反面、デジタル時代には映えるのだね。
 そんな中、例によって綺麗に綺麗に撮ってる、監督のミラジョヴォ大好きっぷりが伝わる。ミレディはちょっとウェットなところもあるキャラなのだが、その裏の残忍さなどは省略し、嫁の奔放げなキャラをうまく落とし込んだ感じ。こちらも『バイオハザード』シリーズよりも自由に作り込めるところが功を奏したか。序〜中盤の美味しいところを色々持って行った挙句に、クライマックスでは一歩引くあたりのバランス感覚も良いではないか。予告では悪役キャラの豪華キャストぶりばかりが強調されていたが、ちゃんと主役はダルタニアンと三銃士であったよ。三銃士の三人は、『ロビン・フッド』やら『キング・アーサー』やらの中世コスプレ映画で脇役やってた人たちをかき集めてきた感じだが、それぞれなかなか良かった。ポルトス役のレイ・スティーブンソンは『マイティ・ソー』でも三銃士役だったし……(笑)。それにしてもオーランド・ブルームの空振りっぷりが泣かせる。なんとか次回は頑張ってほしいが、どのキャラもちょっぴりコメディリリーフにならなければならないのが『三銃士』という作品なので、次があってもおそらくろくなことにならないであろう。


 ところで、ルイ13世のボンクラなんだけど妻大好きのキャラは、きっと監督自身に違いないよね。ベッソンを捨ててやってきた奔放な嫁に対してちょっぴり疑ってしまいたくなる弱さと自信のなさ、ああどうせオレは、ポール”ダメなほうの”アンダーソン、シリーズものや失敗リメイクしか撮れない監督さ……。でも変わって行きたいんだ! という王の最後の台詞を、この『三銃士』で新境地を目指した監督の気持ちに重ね合わせると泣ける! まあ今作も失敗リメイクの系譜に連ねられてしまうかもしれないが、君の頑張りは伝わったよ!


 つ〜わけで普通に面白い。『パイレーツ・オブ・カリビアン』のどれよりも面白い。アメリカでもこけたようですが、なんとか収支トントンぐらいまで持って行って、『四銃士』と『鉄仮面』も撮って下さい! ミラジョヴォたん共々、ずっと応援してるよ!