"裏切り者を裏切る者"『密告・者』


 『アクシデント』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111023/1319347777)と続けて公開の香港映画。


 一般人ながら犯罪組織の中で警察に情報提供を行う「密告者」たち。ある密告者を使い、犯罪組織を壊滅に追い込んだリー刑事だが、正体のバレてしまった密告者が報復を受けてしまう。一年後、リーはサイグァイという出所したての青年を、密告者に仕立て上げようとする。借金を背負った妹を救うため、その誘いを受けるサイグァイ。強盗団の仲間入りした彼は、かつて路上で出会ったディという女と、運命的な再会を果たすのだが……。


 ニック・チョン演ずる刑事と、その刑事の新たな密告者になるニコラス・ツェー。一時期『インファナル・アフェア』などで潜入捜査官の過酷さが描かれたわけだが、今作ではよりお手軽に、犯罪者側にいる人間を身の安全や金で釣り上げて情報を得ようとする姿が描かれる。いい加減、犯罪っつうのも気ばかり使って全然割に合わないのだけど、それをやりながら警察につながってスパイやるんだから、二重に苦しい。それでも得られるお金はせいぜん10万香港ドル、密告した相手が逮捕されればいいが、失敗すれば金を得られても報復が待っている。
 そんな密告者を、「友人のように扱いつつ、いざとなれば使い捨てろ」という方針でもって扱って来たニック・チョン刑事。首尾よく情報を得て功績を挙げ昇進したものの、密告者が報復で深傷を負い精神を病んだことから良心の痛みを抱えることに。でもって酔った勢いで娼婦とやっちゃって……。
 ま〜、とにかく密告者含めて周囲を散々な目にあわせてしまうわけだが、それでも一年後にまた新たな密告者ニコラス・ツェーを使おうとする。大変なことになった一年前のあらましは半分程しか描かれず、現在の事件が進行するのに合わせて少しずつ明らかになる構成。主人公はもう明白に、かつてと同じ過ちをまた繰り返そうとしているのだが、わかっていてもやってしまうのが人の常。いや、警察からしたら使い捨て奨励なのだから、過ちでなく功績と捉えられているのだが、本人的には良心の呵責で葛藤しまくり。


 ドラマとしては、ニック・チョンの方もニコラス・ツェーの方もかなりシンプルな話でまとめられているし、犯罪計画の描き方も特別斬新かというとそうでもない。銃撃戦あり、カーチェイスありで実は盛りだくさんで、ロマンス要素まで絡む。要はベタっちゃあベタで、突出したインパクトは感じなかったのだが、各要素がうまく噛み合ってお互いの緊張感を高めている。
 雪だるまのように事態が大きくなりながら転がっていく結末まで含め、刑事と密告者の人間模様を余すところなく描き切り、高い完成度を感じさせる作品となった。ちゃんとタイトル通り「密告者」が主題なのも素晴らしいですね。


 ニック・チョン、カッコ良かった! こないだ観た『コネクテッド』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20111021/1319192006)と合わせて、急激に株が上昇している!(今までは名前覚えてなくて、『エグザイル』に出てたちんちくりんの人と呼んでいた。すんません!) ダンスシーンの笑顔がステキ過ぎる。微妙にドヤ顔なところもいいね(笑)。
 ニコラス・ツェーは最近スキンヘッドづいて、イケメンからの脱皮を計っているのか? そんなことしてもどうせイケメン過ぎるんですけど……。
 ヒロインのグイ・ルンメイは『海洋天堂』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20110724/1311485181)のサーカスっ娘であった。ちょい蓮っ葉な感じが良いですな。強盗団のボスの情婦なのだが、妊娠した途端に捨てられてしまう! かつて警察から逃走中に顔を合わせたニコラス・ツェーと心を通わせる役なのだが、心の満たされないような表情が雰囲気出てるよ。


 『アクシデント』に続きクリアファイルももらえて、上映もフィルムだったし嬉しいな〜。この規模の作品が公開されるのはまことに喜ばしい限りであった。

コネクテッド スペシャル・エディション [DVD]

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エグザイル/絆 スタンダード・エディション [DVD]

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