『猟銃』

 
 普段は舞台や演劇は観ないのですが(一昨年に宝塚行ったけどな)、中谷美紀を一回生で観てみたい! ということで『猟銃』西宮公演に行ってきました。
 兵庫県立芸術文化センターの中ホール。客席はほぼ満員。二時間弱の舞台で、価格は7000円ということで、演劇としては小さい作品かな。内容はほぼ一人芝居。関西では京都と西宮での公演ということで、なぜ大阪じゃないのかと思ってましたが、原作の舞台がこの西宮や芦屋など兵庫県内なのですね。


 山で見かけた猟人らしき男を描いた『猟銃』という詩を雑誌に寄稿した「私」。彼の元に、三杉という男から手紙が届く。貴方の詩のモデルになった人物は私ではないだろうか? あなたに、自分のもとに届いた三通の手紙を読んでいただきたい……。三杉に届いた手紙、それは異なる三人の女性からの手紙であった……。


 三杉の妻のみどり、その従姉妹の彩子、彩子の娘の薔子からの三通の手紙、それを中谷が一人三役で演じ分ける、という構成。ほぼ一人で喋りっぱなしという朗読劇に近いものなのだが、当然台詞は全部覚えているわけだ。近頃、映画なんかではいまいちその演技力も発揮されない役柄が続いてると思っていたが、こちらはさすがの底力を見せてもらった。終わった後、つい「おじ様、薔子ね」と延々と女学生のモノマネをしてしまった。衣装や舞台装置も含めて表現の使い分けがうまく、こぢんまりとまとまってはいるものの、完成度を押し上げている。


 お話は、気づきもしなかった不倫に仰天する薔子、実は不倫に気づいていたみどり、不倫しながらも内心は三杉を愛していなかった彩子、それぞれの告白……ということで、まあ書き込んではあるものの、モテたい男の書いた話だな〜という印象。たぶん本で読んだら放り出している。昭和前半の価値観ですね。まあ心理の表現の素材としては、いいんじゃない。


 でもやっぱりライブはいいね〜。終わってから拍手して、まだ役が抜け切ってないような泣き顔でお辞儀する中谷美紀を見ていると、ちょっと胸がいっぱいになってしまった。いい思い出になりました。

猟銃・闘牛 (新潮文庫)

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