"サソリから復讐者へ"『レッド・リベンジャー』

レッド・リベンジャー [DVD]

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 ドルフ・ラングレン監督第二作!


 元特殊部隊の兵士だったニコライ・チェレンコは、修理工として妻と息子と共にささやかな生活を営んでいた。だが、彼の住む町で起きた犯罪者と警察の銃撃戦に巻き込まれ、妻子は無惨に命を落とす。怒りに燃えたニコライは、主犯格の男を追い、部下もろとも射殺した……はずだった。それから七年、アメリカで孤独に生きてきたニコライのもとに、娘をさらわれた大富豪がやってくる……。


 原題どおり「メカニック」なドルフさんが車の修理やってるオープニングから、息子と妻との幸せな生活をまず見せる。彼らが住んでいた小さな町で行われていた麻薬取引と、そこで起きたトラブルから銃撃戦に発展する様。強欲なギャングが取引相手を射殺し、駆けつけた警官をも蹴散らし、周囲にいた民間人やドルフの妻子をも殺してしまう。怒りに燃えたドルフは、元ロシア軍特殊部隊スペツナズとしての過去を露にし、昔のように顔に迷彩を施した出で立ちでギャングを襲撃、全員を射殺する……。
 ……あれっ!? 復讐終わっちゃったよ! これだけ読むと映画全体のあらすじのようなんだけど、実はこれが冒頭5分なのである。この5分は素晴らしく凝縮された内容で、演出も実に真面目にやっていてスタイリッシュ。いや〜、ここで終わっても良かったのに。


 しかし無情にも事件は7年後へ進み、仇だったギャングが実は生きていて、ドルフさんはアメリカ人の女をさらったのを取り返すことを依頼され、ロシアへ舞い戻るのである。
 ドルフさんは高学歴と格闘家としての実績を併せ持つ才人なのだが、なぜか映画では普通の人を演じたがり「漏れtueeeeee~!」というセガールやヴァン・ダムのようなナルシシズムとは無縁である。今作ではそれに加えて、作戦決行前日に現地に下見に行った先で暴れ回り、あっさりと顔を覚えられてしまうという不思議な……というよりただのバカのようなキャラを熱演! やべえ! 作戦も人に任せっぱなしだし、リーダーシップも発揮しない。元スペツナズだから強い事は強いんだが、他は全然ダメな人物像。うーむ、元スペツナズと言うと自然と代表作『レッド・スコルピオン』を思い出すところで、もしかしてあのキャラの後の姿!?とか妄想を膨らませてしまうのだが(『レッド・スコルピオン』の役名はニコライ・ラシェンコで、今作はニコライ・チェレンコである)、やっぱりあの賢くなかったキャラは年食っても大して成長してないということなのか?


 中盤、都会を離れて国境を目指すのだが、なかなか敵が追いついて来ず、まるでロードムービーのようで退屈。ここでの見せ場は、ついにドルフさんが真の姿……メカニックとしての本領を発揮し、車を修理するところ。いや〜、器用ですね〜……ってどうでもいいよ!


 ようやくクライマックスが訪れ、田舎の農村でのギャングとの4対8ぐらいの銃撃戦。手引きしてくれた娼婦が撃ち殺されるシーンや、血の広がる水中からドルフを捉えたカットなど、目を見はるような美しいシーンも多いのだが、全体としては間延びした作り。冒頭5分が本編で、あとの85分が蛇足のような内容。それでも初監督作『ディフェンダー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101015/1287125735)より長足の進歩を遂げており、次作へ向けた興味はつながったのであった。

ドルフ・ラングレン ザ・リベンジャー [DVD]

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