"誤解とすれ違いの果てのカオス"『レジェンド・オブ・フラッシュ・ファイター 格闘飛龍』

 DVDで鑑賞。『方世玉』シリーズ!


 人格者の父と武術の達人の母を持つ方世玉は、街に最近越してきた富豪・雷虎の娘をそれと知らず助けることに。街で信望を得られない雷虎は、娘をだしに婿取りの武術大会を企画。武術の達人たる妻を倒せば娘をやる、とおふれを出す。野次馬根性で参戦を決める方世玉だが……。一方、時の清王朝は抵抗組織「紅花団」の暗躍を怖れ、新たな総督をこの地に送り込み、彼らの連判状を手に入れようとしていた……。


 武侠小説の英雄を主人公にした、ジェット・リー作品では珍しくシリーズ化した作品の第一作。武術指導はコーリー・ユン。ちょうど『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズの後期に重なって撮られている。弁髪のままでも撮れるから、ということなのかな……?


 清朝による支配と、その転覆を狙う「紅花団」の対立が軸……なんだが、ジェット先生演ずる方世玉が、街で富豪の娘ミッシェル・リーと出会う話と、その婿取りの武術大会に参戦する話が序盤から延々と続き、なかなか本筋に移らない。コメディテイスト強めのワイヤークンフーで、ここらへんは香港映画のいつものごった煮感覚。
 ジェットとミッシェル・リーが出会ってるけどお互いに素性は知らない、武術大会にジェットが出てきてもミッシェルが逃げ出しててすれ違い、身代わりに立てられた不細工な侍女の顔を観てしまったジェットが勝利目前で棄権、という説明するのも大変なややこしいシークエンスにもどかしい思い。さらに棄権したジェットの行動にプライドの傷ついた師にして母ジョセフィン・シャオが男装してジェットの兄を名乗って乗り込み、それまで戦ってたミッシェル・リーの母役のシベール・フーと熟女対決を展開するというカオスを極める展開に突入! 武術大会で娘をゲットするのにその母親と戦う、という流れもすごいんだが、映画はさらにそこを超越して大変なことになっていく。この手のカンフーものは、だいたい嫁の方が強いような気がする。


 誤解とすれ違いによる恋愛劇はこの後も延々引っ張るが、こっちが一段落ついたところで、やっと本筋が動き出す。実はちょこちょこと伏線も張られていたんで、ベタベタだからってうっかり見ていてはいかんのだ。


 清朝の総督として登場するのが……出た! チウ・マンチェク! この後、ジェット先生が去った後の『ワンチャイ』シリーズを引き継いだりと大活躍し、『ブレード 刀』にも主演。今作が映画デビュー。非情の使い手としてジェットと棒術戦、カンフーバトルを繰り広げる。
 クライマックスでは、狭い床下に入り込んで、低い姿勢での攻防……頭がぶつかったりして……あれ……?……これって『エクスペンダブルズ』のジェット・リーVSドルフ・ラングレンと同じじゃないですか! 武術指導が同じ人なので、こういう過去の名作からも流用がされてるのだな。


 原作がそうなのか? 登場人物が多く、やや群像劇的。ジェット・リーは主役だが、数多いキャラの一人でもある印象。最後に美味しいとこを持ってく人が出て来る辺り、オレ様映画ではないのだよね。ここらへん、続編がどうなってくるのか楽しみ。
 総じて『大地無限』『新・少林寺伝説』の方が単品としてはまとまってて上かな……。続編込みで評価すべきかもしれないので、保留しとこう。

エクスペンダブルズ [Blu-ray]

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