"大らかなりし時代"『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』

ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 [DVD]

ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 [DVD]

 東宝特撮の未見作品のチェック中。


 金庫破りの吉村のヨットを乗っ取り、南の海で遭難した兄を捜しに船を出した漁師の息子、良太。巻き込まれる形になった市野、仁田も合わせた四人は、嵐の夜に巨大なハサミに襲われる。ヨットを破壊され、辿り着いたのは南海の孤島レッチ島。そこでは秘密組織「赤い竹」によって、インファント島の住民がさらわれ強制労働に従事していた。吉村たちはインファント島の娘ダヨと共に、事態を打開すべく島で眠りについていたゴジラを目覚めさせるが、巨大なハサミの主……南海の悪魔エビラが襲いかかる。


 当初は『キングコングVSエビラ』として企画されてた話なんだよな、これは。確かに南海が舞台で、原住民が出てきたりするのだから、コングさん主役の方が似つかわしい。
 しかし、ゴジラも「偶然」この島で眠りについてるという設定で、あまり登場に必然性がない。インファント島の住民がさらわれて苦しめられてるんだから、対戦のミスマッチを考えなければ、双方の島の守護神であるモスラとエビラが戦った方が自然だろう。
 また宝田明平田昭彦水野久美が出てるよ……ということで、ファンにはなにかと楽しい一本であるのは確かだが、普通に考えたら芹沢博士役で歴史に残ってるはずの平田が変な軍服コスプレしてたり、哀切な最期を遂げたはずの水野久美が同じく原住民コスプレだったり、うーん……まあ大らかにならないと見ていられないね。嵐の洞窟で何日も野宿してるのに、服が綺麗なままだったりヒゲも伸びなかったり、そんなとこもいちいち突っ込んでられない。


 『三大怪獣地球最大の決戦』『怪獣大戦争』のキングギドラ二部作で一区切りつき、それ以前の『キングコング対ゴジラ』と『モスラゴジラ』のエッセンスを抽出した作品という印象。『キングコング対ゴジラ』と合わせて南海シリーズと位置づけるのがいいかもしれない。ただ、舞台がほんとに南海の島だけで終わってしまうので、『キングコング対ゴジラ』のようなストーリーの広がりや、社会的な目線がほとんどなくなってしまってるのが残念なところだ。


 しかし宇宙怪獣と宇宙人襲来という大風呂敷を広げた『怪獣大戦争』の次に、これを作るって発想がすごい。今やったらスケールダウンということで散々叩かれそうだ。『SPACE BATTLESHIP ヤマト』の続編で、「今度は南の島だ!」ということになったらえらいことだろう。……が、この懐の広さこそが怪獣映画の魅力の一つでもあるのだ。世界は広くて、怪獣はどこにでも存在しています。どんな場所にでも怪獣が現れ、そこにドラマが生まれる。これ、大前提。やはりあれこれと理由づけと辻褄合わせばかりに汲々とした平成VSシリーズは、表現の幅を狭めたよなあ。


 さあ、この後は、中三からゴジラにハマった人間としても、正直言って見るのが面倒くさくて避けてた、いわゆるミニラ二部作に続きますよ!

キングコング対ゴジラ [DVD]

キングコング対ゴジラ [DVD]

人気ブログランキングへご協力お願いします。