"おまえら、こっち見んな!"『光る眼』
- 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
- 発売日: 2002/11/01
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田舎町で起きた、町民と動物全てが6時間に渡って失神した事件。直後、町の女性10人が、一度に妊娠する。生まれた子供達は、同じ金髪と高い知能を持ち、しかも意識を共有しているかのようだった。彼らの眼が光る時、大人は彼らに逆らう事ができず、自由に操られてしまう。政府が彼らの特異な能力に着目する中、彼らを子として育てる親達は葛藤するのだが……。
ジョン・カーペンターと言えば、個人的には『ニューヨーク1997』『ゴースト・オブ・マーズ』あたりの印象が強いが、『遊星からの物体X』『スターマン』『ゼイリブ』と、宇宙人を題材に多彩なアプローチで映画を作っている。今作もその系譜に連なる作品。しかし多彩なアプローチと言うと聞こえはいいが……単にバラバラなだけなような気もするなあ……。
しかし面白い。まさに全編、職人芸。『マッハ!』ばりの「CGを使いません!」というこだわりで(まあCG使わせると『エスケープ・フロム・LA』の波乗りシーンみたくなっちゃうんだが、この人は)、全てのシーンに手作り感が溢れている。のどかな田園風景を同じような容姿をした子供達が、時折不気味な笑みを浮かべながら整然と列を為して進む光景だけで、背筋に寒気が走る。いや、同じブロンドのカツラ被ってるだけ、と言えばそれまでなんだけど、自作の音楽含め、異様な空気を醸し出す。淡々として、奇を衒わない抑制された演出が、逆に恐怖感を煽る。
低予算だからこその演出、低予算ならではの味わいが、じっくり堪能できる。
愛されて生まれたはずの子供達が、自分たちとはまったく異種の生き物である、という恐怖。彼らは高い知性を持っているにも関わらず感情はなく、生みの親である人間も、手を下さずに排除していく。人間を下等動物と見なす彼らに対し、クリストファー・リーヴ演ずる医者は、「感情を持たないお前らこそ下等だ」と言い返す。そんな中、十人いたはずの子供たちの中で、出産時に連れ合いとなるはずだった女児を失った男児だけは、喪失の痛みを知ったことで、家族を失った人間に対して共感を覚えるようになる。
んん〜、ほのかに哲学的ではないか。その上で深いところには切り込まず、観客の想像に委ねる。これも低予算ゆえだが、それがかえって感興を深め、我々の意識をより遠くへ誘う。
手作りで、製作費安そうで、その代わりに爆発は妙に景気がいい。全てが愛すべき映画だ。
遊星からの物体X 【ブルーレイ&DVDセット】 [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
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