”決断なくして幸福なし”『遠距離恋愛 彼女の決断』


 ドリュー・バリモアって、実際ジャスティン・ロングと付き合って別れて、で、よりを戻してこの映画撮ってるんですってね。


 彼女になじられふられたギャレットは、バーで友達とやけ酒。そこで、新聞社に研修で通うエリンと出会い、意気投合。一夜を過ごした二人は、彼女が西海岸へ帰る6週間の間だけ、という約束で付き合い始める。だが、お互いの理想を見出し、その日を迎えても別れ難かった二人は、遠距離で付き合い続けることを選択する。だが、行く手には多くの困難が待ち受けていたのだった……。


 『ローラーガールズ・ダイアリー』で監督業に進出したドリュー。相変わらずのロマコメ路線も続投……なんだけど、年齢を重ね、よりビターな要素も加えるように。


 冒頭、ジャスティン・ロングがプレゼントを用意してなかったことでガールフレンドに捨てられるところから始まる。
 バーでやけ酒飲んで愚痴る彼に、友人はこういう。


「おまえは本気じゃない。本気じゃないから女にそれを悟られて捨てられる。そのくせ捨てられたと言って嘆くんだ」


 グサッ! いたっ! あいたっ! ああ〜、冒頭からいきなり胸に刺さりましたわ……。何してくれますのん……。
 で、号泣の真似をする友人。ジャスティンは理解できなさげに「女にふられて泣いたことはない」と言う。


 まさにそのバーでドリューと出会い、意気投合して付き合い始めるジャスティン。ドリューは研修でNYに来ていて、6週間で西海岸に帰らねばならない。当初は条件付きで付き合ってたのだが、その日が来ても別れがたく、遠距離で付き合うことに。


 恋愛映画では、出会った二人は「理想のカップル」で、価値観や趣味も合って意気投合し、苦難を乗り越えてその後も幸せに暮らしました……ということがよく描かれる。この映画でも、最初の6週間でいかに二人の価値観が合い、セックスの相性も良く、理想的な関係であるかということが描写される。危機も迎えるのだが、友人や家族の適切なアドバイスもあって、気持ちを確かめ合い、関係を確認し、疑問も話し合う。そして運命の6週間目を迎えたところで、互いに愛を告白。
 ……完! となってもいいところなんだけど、この映画の本題はここから。
 かくも理想的に関係を築いた二人であっても……遠距離恋愛」ってのは、そんなに甘くねえんだああああーっ!


 東京ー大阪間なんざ比較にならねえ距離! 休日はバカ高い航空券! 気づけば月日は過ぎ、こないだまでは応援してくれてた友人・家族も浮気疑惑を口にするように! 情熱が高まっていれば高まっているほど、それ自体が互いの寂しさを煽り立てて行く。同じく遠距離やってる女の同僚にアドバイスを求めたジャスティン、出て来た答えはテレホン・セックス! そして、NYで仕事を探していたドリューだが、ついにシスコで就職口が見つかってしまう……。葛藤するドリューはある決断を下し、それを受けてジャスティンも一つの決断をする。


 ここで、「泣いたことはない」と言ってたジャスティン・ロングが一筋の涙を流すんだね……。「どちらが何を犠牲として払うのか」「それによってもう一方はどんな代償を支払うのか」突き詰めていけば、それはこういうことになるしかない。わかっていてもやるせないのだが、「理想のカップル」をもってしても、遠距離と言うのは文字通り埋めがたい溝なのだ……。
 それでも「決断」するしかない。それこそが「幸福」へと通じる唯一の道なのだ。


 最初の6週間でさえ、非モテにはハードルが高すぎてあっぷあっぷだったのだが、そこをクリアしても遠距離は大変! ということで、安直に「遠距離なんていいかも」「自分なら大丈夫」とか言ってる奴はこの映画を観て打ちのめされるべきだと思うよ。


 ジャスティンの友達役の二人も面白いし、下ネタもほどほどに効いている。きれいきれいな恋愛ドラマじゃなくて、そこかしこから「生活臭」が漂うのが素晴らしい。高い完成度で「ロマコメの女王」の健在ぶりを見せつけたドリューでした。

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