『レポゼッション・メン』


 『レポマン』のリメイクかと思ったら違った。


 近未来……精巧な人工臓器の発明で、人類の寿命は飛躍的に伸びていた。だが、臓器を発明したユニオン社によってローンが組まれ、臓器の代金の返済を96日間滞らせた者は、「回収」の憂き目に遭う。生きたまま臓器を抉り出す回収人であるレミーは、社内でもナンバーワンの実績と腕前を誇り、多くの滞納者から臓器を回収していた。だが、ある日、AEDの電流の逆流事故により、自らの心臓を損傷させてしまう。意識が戻った時、彼の胸にもまた人工心臓が移植されていた……。


 『ブレードランナー』的な未来世界において、人工臓器を回収する主人公。しかし、自らも人工心臓を移植されて初めて命の大切さに気づく……という部分を、あっさりモノローグで語っちゃったりするあたり、あまり世界観やテーマについて深く考えてる感じではない。美術の作り込みとか、親子関係の描写とか、社会風刺としての人工臓器の描き方とか、どれもこれも少しずつ弱い。ヒロインとの関係性も、いまいち必然性に欠ける印象。なんでこの女なの?
 筋立てが単に筋立てでしかなく、どうも話の転がり方に魅力がない。せっかくカリス・ファン・ハウテン使ってるのに、ステレオタイプのつまらない役だし。


 ……が、臓器を取り出すグロシーンや、アクションシーンに突入すると、突然ノリノリの音楽がかかって、俄然テンポが上がる。ナイフを煌めかせるジュード・ローが大格闘戦に挑むあたりの力の入れようが、他と全然違うじゃないか! タイプライター爆撃や、肺の着ぐるみと言う馬鹿馬鹿しいアイテムにはかなり笑った。中盤の仕掛け以降の、ややコント的な演出も面白い。


 そして、ラストシーンは完全に某未来映画。あ、なるほど、このオチをやりたかったのね……。


 うーむ、製作総指揮も兼ねた新人監督らしい、自分の好きな物をいっぱい詰め込んでみました、的な映画であったな……。異様にいきいきとした部分と、定型通り流した部分の差が露骨。全体としてつまらなくはないが、パロディの盛り込み方、フォロワーっぷりがなんか無邪気というか、臆面がなくてあまり評価出来ない。ド新人がオリジナリティにこだわらなくてどうするんだ?という感じ。雑なのはまあいいとして、とんがったものには欠ける。あまり今後に期待持てる感じではないな……。

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