『機動戦士ガンダムUC8 宇宙と惑星と』福井晴敏
機動戦士ガンダムUC (8) 宇宙と惑星と (角川コミックス・エース 189-9)
- 作者: 福井晴敏,矢立肇,富野由悠季
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2009/04/25
- メディア: コミック
- 購入: 6人 クリック: 32回
- この商品を含むブログ (70件) を見る
そんな簡単にジオンと連邦に所属した者同士が手を取り合ってしまっていいのか、というのが、前巻ラストで抱いた疑問だったのだが、それにエクスキューズを持ってきた格好。逆にこの展開を挟んだことで、次巻以降の信頼関係はいったい……?と心配になるんだが(笑)。やっぱりちょっとしんどいなあ……。人種対立が中心の『SEED』なら、僕達そんなの気にしませんよ、と言い放つ奴がいてもおかしくないが、UCの歴史の重さはこの展開を阻む。で、ミネバというのは希望として語られる「若い世代」ではあるんだが、それ以上に『Z』『ZZ』のイメージが強いジオンのアイコンであって、ブライト艦長同様に、この役回りを振るのが適切なキャラクターであったかというと疑問になってきた……。これならグレミーみたいなキャラが新たに登場した方が良かったんではないかな。
ジオン共和国の国粋主義者には笑ったなあ。あまりに某自衛隊の論文話を踏襲しすぎて、わかりやすくはあるが「日本かよ!」とまで思ってしまう。いやねえ、ジオン共和国の軍人が何を考えてるか、なんてどこの設定廚も考えたことなかっただろうし、福井が公式として先駆者としてこう書いてしまったのだからしようがない。しようがないんだが、もう少し書きようがあったのではないかな、とも思う。
そしてフル・フロンタルの目的の、あまりの地味さ加減には、正直戦慄した。ここは福井すげえ、と言わざるを得ない。宇宙世紀の社会構造を考え抜けば、次の一手がこの結論になってもおかしくない。シャアでもシロッコでもハマーンでもありえなかった発想。それもこのキャラクターならではだと思える。そして、これの何が悪いの?と思ってしまうオレ自身……! 否定材料としてシャアの「情熱」やジオンの名を持ち出してしまうあたり、ミネバ様も相当危険ですよ!
最終章で、バナージはこれを超えるテーゼを提示出来るのか? 注目だ。
モビルスーツ絡みでは、退場したかと思っていたクシャトリヤの復活が見せ場。最終戦に向けて、連邦側からはバンシィも出て来て、役者が揃いつつある。いよいよやってくる最終局面、楽しみ!