『機動戦士ガンダムUC4 パラオ攻略戦』福井晴敏

 拿捕された「ユニコーン」とバナージは、ネオ・ジオンの巣窟「パラオ」へと連行される。そこで「シャアの再来」と呼ばれる男、フル・フロンタルの素顔をかいま見るバナージ。
 一方、多大なダメージを受けたネェル・アーガマだが、上層部は単艦での「ユニコーン」奪還命令を下す。
 バナージ、ミネバ、リディ、フロンタル……幾つもの思惑が絡み合う宇宙で、かつてない要塞攻撃戦が幕を開ける。


 おもしれ〜! 


 え? ここまでの感想と違う?(下記)


http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/searchdiary?word=%A5%AC%A5%F3%A5%C0%A5%E0UC


 いや〜、発端部分が片付いて、キャラの掘り下げが始まったら、急に楽しくなって来た(笑)。
 設定こそ宇宙世紀なんだが、やっぱりこれは福井小説なんだな。どっから見てもシャアなフル・フロンタルには「自嘲」と「甘さ」が足りない! あまりに合理主義的! これじゃシャアじゃなくてシロッコだよ! 皆川ゆかが、シロッコの方がシャアに比べて「完全」(あまりいい意味ではないが……)と評していたが、それにぴったりハマる感じ。シャアから余計なものを取払い完璧にした存在がフル・フロンタルなんだが、それ故に計算高く強くなりすぎ、ナイーブさが失われてしまった。で、その合理精神に噛み付いてマリーダを助けようとするジンネマンとバナージ最高!という、福井小説に定番の展開になるわけだね。熱い!


 しかし福井小説が、永遠に富野ガンダムと交わらないのは、やっぱり「女にモテる」かどうかがちーとも考慮されてないからだ、というのがちょっとわかってきたぞ。シャアからシロッコに流れるレコアみたいな、ほとんど差別的なまでに助平な設定をしてしまうエロさ(その対比にエマ中尉のようなキャラを置く嫌らしさ)が、福井晴敏には致命的に欠けているんだな。だから福井にはシャアを書けないし、対比としてのシロッコも生まれえない。福井はやっぱり女に対してロマンチスト過ぎるんだ。
 でも、だからこそマリーダ頑張れ! 富野だったら殺されるしかない彼女も、福井小説でなら違う道が見つかるのかも知れない。


 宇宙世紀ガンダムによくある小道具を使って、かつてない「状況」を作り出そうという福井のストーリーテリング的な挑戦精神もよく見え、なかなか面白くなって来た。あとは「百式」キター! 「プル」キター!と言って騒げばOK!


 さて、アニメのBDはもう予約してしまったわけだが、やっぱりそれまでに全巻読んでおくべきかな、これは。


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