『絶望ブランコ』大石圭
- 作者: 大石圭
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/11/10
- メディア: 文庫
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いや〜毎度毎度読み始める度に、「またこのパターンか……」と思うのだが、読んでる内にそんなことはどうでも良くなるんだよね。ストーリーには今まで以上に捻りがないのだが、かつての幸せの象徴としてのサーカス団の描写の美しさが素晴らしく、幾度も胸を打つ。輝いていた頃の両親、優しかった団員たち。貧乏で一つ所に落ち着くことはなかったが、だからこそ他では出来ない体験をした。もう二度と、その頃が帰って来る事はない。
ああ、だけどそれら全てが失われたわけじゃない。多くを望まなければ今だって幸せなのだ。たとえ人を殺め、身体を売っていても、明日には全てが失われるとしてもだ。
タイトルからして既に絶望へと急降下することが義務づけられた空中ブランコだが、その結末があるからこそ悲哀があり、より一層その瞬間の輝きが引き立つ。どんなところにでもある小さな幸福を示す、「絶望的なハッピーエンド」は今作でも健在だ。
- 作者: 大石圭
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/12/25
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by TREview