『扉は閉ざされたまま』石持浅海

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

 借り物。


 大学の同窓会で、事故を装って後輩を殺害した男。現場を密室にし、外部からの侵入を防ぎ、安否さえもわからないようにする。が、参加者の一人だけは疑問を抱き、事件の真相に迫る……。


 殺人が起きている事を知っているのは主人公である犯人と読者のみ、そして最後の最後まで密室は閉ざされたまま。「著者のことば」によると、「鍵のかかった扉を斧でたたき壊す」というよくあるシーン抜きで書きたかったとのこと。なるほど、そこを出発点にするとは、けったいな発想である。
 ドアが高級で、借り物の家で、そこまでするほど大胆な登場人物はいない、中の人は寝てるだけかもしれない、というエクスキューズに納得して、その状況での推理ゲームを楽しもう。実際は「そんなの関係ねえ!」と言い出す人間が現れたりするかも知れないが、そういう心配はない。
 そうは言っても、まず話の方向性ありきで、それに合わせた登場人物と設定が用意された感が大きく、「ああ、作者はこんな細かいところまでよく考えたなあ」としきりに感心した次第。そういう意味では非常に面白かったし、よく出来てると思うんだが、「けったいなもの」を読んでるという感触は最後まで拭えず。
 ……考えたが、全員かなり酔ってるという描写なら、こうやってだらだらとくっちゃべる話も成立するかもなあ。