力こぶ

……が出来るのである。

 メガネの似合う繊細な文学青年だった数年前も今は昔、一年半に渡るキックボクシング修行のおかげさまを持ちまして、肉体は超絶的ビルドアップを遂げた。
 いよいよ夏近し、ということで夏の定番であるアロハを着用、むき出しの右腕にぐっと力をこめると……おお、すげえ! 自分で言うのもなんだがすごすぎる。
 むっくりと自己主張する力こぶ……精神的ダメージで体重63キロ(現71キロ)まで落ち込んだ二年半前と比しても、腕周りはほぼ倍近くになっているのではないか……?
 日頃のスーツ姿を見なれている人間には思いもよらなかった変化が、今まさに夏を迎えんとする今日この頃、薄着になったその時、露になる……。意識こそしていなかったが、今になってみれば今日という日を待ち望んでいたような気がするな。

 職場にてシャドーに励み出した当初、「うわあ、またあの人がおかしなことをはじめたよ」と思った人間も、この力こぶという動かぬ「証拠」を見れば、私がいかに「実効的」なことをしていたかということを納得せざるをえまい。形ある物にしか価値を見いだせない愚物よ、ひざまずけ!
 今後もスポーツに精励し、「運動したいけど、続けられるかな? 効果あるかな?」と思っている人に対し、「こんなにも効果的ですよ」ということを示す「生きた証拠」でありたいと思うのである。