旅日記第一日目。串本大橋旅情編。

 今回は、和歌山は紀伊大島へ。特急くろしおで三時間というお手軽ロケーション。しかし、大阪から和歌山までは一時間なのに、そこから串本までは二時間かかってしまうのである。やはりど田舎だな。
 IPODをジャカジャカ鳴らしながら、例によって思考停止しつつ、あっという間に三時間。やってきました、串本。台風が太平洋を無駄にうろうろしていたので、お天気は生憎の曇り空。さて、宿のHPを見たら、

http://www.za.ztv.ne.jp/tubakido/

 死ぬほどいい加減な地図があった。予約取った時の案内だと、タクシーで7分程度だそうで、……まあ歩いても一時間ぐらいか?ということで、ぶらぶらと歩いていくことにする。
 大島といえば、昔は船で渡ることで有名だったが、1999年に橋ができて、今では徒歩でも渡れるようになっている。ほぼ1キロぐらいありそうな、えげつなく巨大な橋である。途中で螺旋を描き、あろうことか島の山頂まで続いている。バカみたいに延々と歩いているのは、当たり前だがオレ一人。海は荒れ模様で、下をのぞくと逆巻く波濤が白い飛沫を岩肌に散らしている。
 ……ここに飛び込んだら、きれいさっぱり行方不明になれるだろうな。
 あ〜いかんいかん、疲れてるとネガティブになっていけねえよ。てくてくと一時間近く歩き、ようやく島に着く。県道をまっすぐいけばすぐわかるはずだが、なんせいい加減な地図なので、いちおう宿に電話。
「その道をまっすぐいってもらって、二軒目です〜」
 ははあ、二軒目ですか。じゃあすぐだな。
「一軒目が島に入って500メートルのところで……」
 なぬ!?
「そこから1.1キロ行ってもらったら花がいっぱい咲いてまして、そこになります」
 おいおい、1.6キロで二軒目〜? どんな田舎だよ! さて、ほぼ山頂から島に侵入しただけあって、確かに県道ぞいには全く何もない。ずーっと木! 山! なぜか途中の道に自転車が数台駐輪してあるのだが、まわりは何もなくて、なぜここに整然と停められているのか意味不明。
 ようやく宿につき、部屋に案内される。おお、超キレイ。今回もツインの一人使用で、実にひろびろとしている。いい感じに固めのベッドに転がり、ちょっとうたたね。
 窓の外を見ると、おお、犬がいるではないか。この宿には犬が三匹いるそうなのである。さっそく窓を開けて手を振ってみたが……吠えられた。うーむ、愛想ないじゃないか。
 携帯がここにきてほぼ圏外になっていたり、気分はすっかり人外境である。そんなこんなで、ぼんやりしてたら、あっという間に夕食の時間である。なんか時の流れ方が変わってるよ。
 旅館なんだが、そこは料理自慢の宿らしく、飯だけ食いに来てるおばちゃん三人組がいたが、あとはオレ一人。食前酒を一杯やった後で、さっそく生ビール。サーバーをあまり使ってないのか、一杯目がほとんど泡になってしまい、旅館の奥さんは二杯目を出してくれた。
 刺身やら煮物やら12品の料理をちまちまとつつきながら、ビールをすする。早食いと日頃言われている私だが、こういう時ぐらいはゆっくり食うのだ。ちょっと期待していたが、今度のとこは料理がすごく良い。地元の品やら、結構珍しいものも出てくる。ここで、旅館のご主人登場。料理を出し際に指を三本立てる。な、なんだ? 自信ありげに、
「三日間、同じ料理は出しませんから」
 それは頼もしい。
 ここで飯食いに来てたおばちゃんの一人がお手洗いに立ったが、戻って来た時に声を潜めて他の二人に囁く。
「いや〜、ここの奥さん、ジョッキでビール飲んではったで」
 ……それはオレへの出し損ないを、もったいないから飲んだのだろう。泡ばっかりで、大した量じゃないと思うが……。
 食事の後は、部屋に戻ってテレビをつける。おお、プレーオフ最終戦やってるよ。
 まあ野球なんて家でも見られるだろうという批判?も当然あるだろうが、それは逆で、普段家で野球なんて見ないのである。こういう旅行中という非日常だからこそ、いつもと違う新鮮な気持ちで野球も楽しめるんじゃないか。野村解説を聞きながら見ていたら、ロッテが鮮やかに逆転勝利を飾り、パリーグの覇者となった。おめでとう!
 泊まり客はオレ一人だから、当然風呂もオレ一人。これはご家庭の風呂場よりちょい広い程度のものだったが、かえってこの方が落ち着くな。
 こうして、初日の夜は更けていくのであった……。