2014年04月25日のツイート

”我らの空を守れ”『ローン・サバイバー』(ネタバレ)


 ピーター・バーグ監督作!


 アフガニスタンに駐留する、アメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズタリバン幹部暗殺のため、極秘にレッドウイング作戦を発動。四人の偵察部隊が、タリバンの占拠した村を伺う。だが、山岳地帯を移動中、民間人と遭遇してしまい……。


 『バトルシップ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20120416/1334576202)が大コケして、製作が危ぶまれていた企画を、マーク・ウォールバーグが救い上げて完成した映画。タイトル通り、四人の内の一人だけ(当然主役のウォールバーグさんですよ)が生き残るお話なのだが、他の三人もテイラー・キッチュベン・フォスターエミール・ハーシュと一応、主役経験もある人たちで固めていてまあまあ豪華。全部コケたSF映画バトルシップ』、『パンドラム』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20101016/1287226212)、『ダーケスト・アワー』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20121216/1355652578)の主役たちということで、まさにその主役力の高さをこのサバイバル映画内において試されることになる。生き残るのは誰か……!? いや、作中ではみんな死ぬんですが。


 冒頭、シールズの地獄のスパルタ訓練から始まり、そこをくぐり抜けた面子は体育会系の部活をもっと過激に濃密にしたようなホモソーシャル感で結ばれていることを説明。その中で、それぞれに家族、恋人、人生を持つ男たち四人が偵察に出発する。一応、ちょい階級上のウォールバーグさんがリーダー格なのだが、まあ友達感覚なノリですね。
 重い装備を背負ってひたすら山の中を行く地味な偵察シーンが、結構延々と続き、なかなかドンパチが始まらないのがちょい意外であったね。しかしここで民間人に遭遇し、予告でもあった究極の選択が突きつけられる……!


 結局、逃がしたことが仇となり、あっという間にタリバンに包囲され、猛攻撃が開始。完全に四人側の視点で撮っているので、撃っても撃ってもどこからともなく敵が現れるように見える。銃弾が頭上を飛び交う中、一歩位置がずれれば死、という臨場感が凄まじい。そんな中でどんどんボロボロになっていく四人!
 数が遥かに上なことに加えて、タリバン側は装備も軽装、地元だから地理的なことも詳しく、足場にも慣れている、ということで、いくら距離を取ろうとしてもあっという間に詰めてくる。では、いったいどうすればいいのか……ということで、もはや手段は一つなのであった。
 そんなわけで、二回も崖から飛び降りるシーンが入り、よくこれで死なないな、というレベルで叩きつけられる四人。全員、顔も身体も傷だらけで、このあたりの特殊メイクは良かったね。おかげで、途中、ちょっと誰が誰か区別がつかないところがあったくらい。


 エミール・ハーシュの顔がちょっと痩せたジャック・ブラックに見えるせいで、やたらと『トロピック・サンダー』を思い出させるのだが、この映画は大真面目そのもので、とにかくヒロイックに隊員たちを描き続ける。自らの命を犠牲にし、仲間のために散るキッチュ……! すいません、ブリトー泥棒したことはこれで許してやってください!
 キッチュからの衛星電話を受け、冒頭に出ていたエリック・バナと余興やってた新兵他、十六人の兵士が乗るアパッチがやってくる。出払っていたために護衛の戦闘ヘリはついてませんが、そのリスクを犯して仲間のために駆けつけてきたのだ。ウォールバーグさんも一安心。いかにも「もう大丈夫だ!」という感じの音楽が鳴るんだが、これって『十三日の金曜日』の警察が駆けつけた後の演出そっくりだよね。


RPG!」


 うーむ、中にはRPGなら装甲で弾けるヘリも存在するらしいが、ホバリング中にハッチ空いた中に撃ち込まれてはひとたまりもなかったな……。チヌーク・ダウン! チヌーク・ダウン! ここは『ゼロ・ダーク・サーティ』(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20130221/1361458559)の「アッラーフ、アクバル!」シーンに匹敵する負のカタルシスとでも言うべき展開で、悲惨を通り越して痛快でさえあった。つうか、エリック・バナ使ってること自体がミスディレクションであるな。全然活躍しなかった……。


 その後はとうとう一人になったウォールバーグさんが、逆に民間人に助けられる展開。アヒルとナイフのくだりには爆笑したね。ここらへん、邪悪なタリバンと善いアフガニスタン人ということでバランス取ろうとしてるんだろうけど、本当に米兵から観た単純化された構図ですね。そんなこんなで、主人公が活躍できないクライマックスがやってくる。一応、もみ合いとかしてたが、それは映画の都合で、実際はほとんど寝たきりだったんではないかな。
 ラストは、自分をかばってくれた村の人たちにありがとうと感謝する感動的なシーンがあるのだが、普通にしゃべってた後でヘリの中で急に心停止しているのが何か脈絡なかったな。逆にこれこそが実話というものなのであろうが……。


 野戦シーンの迫力など、アクション映画としては買うが、結果的に何しに行ったのかもわからないぐらい犠牲者を出して、無残な失敗に終わった作戦までカッコブーな美談に仕立ててしまうあたり、こりねえ奴らだなあ、という感じがしてしまうね。国外に駐留する米軍を維持するためには、まさにこういう「物語」が必要なのであろう。

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