"五手先、十手先、さらにさらにその先へ"『シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』


 ガイ・リッチーの監督作がシリーズ化!


 ヨーロッパ全土を揺るがす野望が進行していた。そこに宿敵の影を見たホームズは、彼に挑戦状を叩き付ける。ホームズと対等の能力を持つもう一人の天才、モリアーティ教授……。配下の犯罪者を使い陰謀を進行させながら、モリアーティはその暗殺の魔手を各国要人に加え、結婚を控えたワトスンにまで伸ばす。果たしてホームズは彼の野望を打ち砕けるのか?


 一作目(http://d.hatena.ne.jp/chateaudif/20100319/1268996604)はアクション部分はまあまあ面白かったが、推理部分は完全に余計、という印象。でもそれより面白かったな〜。なぜかっちゅうと、その推理をまったくしなくなってるからで……(笑)。予告からしてそんな感じではあったが、ほぼアクションに特化。ホームズの名探偵としての特性は、瞬間瞬間の観察力と洞察力にその形を留めるのみとなった。
 前作の評判の良かったところだけを残す、良かった要素を拡大する、というのは続編の常套手段ではあるよね。しかし今作ではもう一つ、ある要素がオミットされた……アイリーン・アドラーことレイチェル・マクアダムス、まさかのオープニング・タイトル前に退場〜! 彼女も前作では好演と言われてたと思うんだが、バッサリとカットされてしまった。これにて男女の恋愛要素は綺麗に吹き飛び、残ったのはホームズとワトスンの執拗なホモ要素! なんてこったい!


 新婚旅行に女装して雪崩れ込み、嫁を記者から放り出すホームズ。そのホームズを服を引き裂いて押し倒すワトスン。まあここらへんの描写には多くを突っ込む必要はないかと思うが、個人的にはその前の結婚式。ワトスンが花嫁に指輪をはめるシーンで、つと目を反らすダウニーJr.の無駄な、あまりに無駄な演技力の発露に愕然としたね。その後、一人寂しく式場に背を向けるシーンの哀愁! アホか! いい加減にしろ!
 今シリーズは、ガイ・リッチーによるかつての相方マシュー・ヴォーンへの復縁を迫るメッセージとして作られているわけだが(要出典)、当然この一連の結婚ぶち壊しシーンは、ヴォーンの妻クラウディア・シファーに対する昔年の思いが込められている(要出典)。
 そうなると、当然アイリーン・アドラーは監督の元妻マドンナということになるわけで、離婚直後に作った一作目ではかつての妻に振り回された思い出を述懐しつつも、今作においてついに過去を吹っ切り、寂寞と共に決別したのである(要出典)。


 ガイ・リッチーベストシーン(映画自体じゃないよ)は、『スナッチ』のブラピのワンパンが炸裂するとこで決まりと思うが、ひさびさにあれを彷彿とさせる切れ味を「シャドウ」演出に見たね〜。要はボクサーのシャドーボクシングと同じものなんだが、拡大解釈して達人の先読みとして描く。一回目はそのまま本来の形で機能させ、二度目は思い切り良く外し、三度目は達人VS達人の先読み合戦としてその超人性を印象づける。結果としてのラストの選択……! 原作準拠の展開も合わせ、終盤の盛り上がりは気持ちがいい。まったく頭脳戦の要素はないのに、チェスを織り交ぜる事でなんとなく頭良さげに見せるところもナイスだ。


 長い割にシンプルで面白く仕上がった作品。さて、次回はいよいよルパンと激突かな〜。

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2012年03月30日のツイート