”命を愛して”『ユダヤ人を救った動物園』


映画「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」予告編

 ジェシカ・チャスティン主演作!

 1939年、ポーランドワルシャワは、第二次大戦の皮切りとなるドイツの侵攻を受ける。ワルシャワ動物園を経営するヤンとアントニーナの夫妻も戦火に巻き込まれ、動物園もまたナチスの徴発を受けることに。占領下で動物園の存続を願う二人は、密かに友人のユダヤ人を匿うのだが……。

 さて『女神の見えざる手』も大好評だったジェシカ・チャスティン、今年2本目の主演作が来ましたよ。ナチスに隠れてユダヤ人を匿い国外へと逃し続けた、ワルシャワ動物園を経営する夫婦のお話。

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 バカ広くて、園内をフリーダムに動物が駆け回ってる、すごくいい雰囲気の動物園だったのだが、そこへナチスの爆撃がドカンドカンと降り注ぐ。生き残った動物たちも、占領下で次々と射殺され、ナチの科学者であるダニエル・ブリュールが希少種だけは保護してドイツへと運び去る……。宣伝で出てるホワイトライオンの赤ちゃんもここでお役御免ですからね!

 たまにドイツ語やポーランド語をしゃべってみつつ、肝心なところは英語で通すなんちゃってヨーロッパ映画ではあるが、ジェシカ・チャスティンは今回は大人しめのキャラをさすがの演技力で見せますね。ダニエル・ブリュールは夫役ではなくて、彼女に気があるナチの科学者兼将校役。そもそも爆撃した側のくせに、恩着せがましく動物を保護しているようなことを言って、自分は尊敬や感謝を受けるべきと思ってる勘違い野郎で、しかも段々とヒロインの好意をも求めるようになる……なんか既視感を覚える役だな、と思ったら、『イングロリアス・バスターズ』とまったく同じキャラやがな。
 ジェシカ・チャスティンの側は全然気がないんだけど、中盤以降、ユダヤ人を匿い出してからは、地下で物音を立てたのをごまかすために抱きついたりして、ますます勘違いされてしまう。調子に乗って手を握るブリュール! それを見てジェラシーを抱く夫! これはごまかすためのお芝居だからと主張するチャスティン!

 夫の方はもう動物がいなくなった動物園を存続させるために、豚を飼っていいか、とナチスにお願いする。厩舎は維持できるし、ドイツ軍に肉を提供できて経営も回るし……何これ、天才的なアイディアだな。そして豚の餌のためにゲットーに生ごみを取りに行き、ごみの中にユダヤ人を隠して運び出す……さらっと描かれているが、もうここまできたら悪魔的な知恵としか言いようがないぞ。
 動物運び込み用の地下通路を通ってこっそり隠れるあたり、まあ重たく悲しい話なんだがちょっぴりわくわくするし、ここに『ライフ・イズ・ビューティフル』の父子がいたらどれだけ大盛り上がりしただろうね。

 クライマックスは、地下に踏み込んで来たブリュール以下のナチ野郎どもが、もぬけのからなのに気づいたところで、ジェシカ・チャスティンが爆弾のスイッチを非情にカチッ! 全員生き埋め!だろうと想像していたが、まあ今回はそういうキャラではありませんでした。
 地味で盛り上がりには欠けるんだが、実は相当すごいことをやってますね、この人たち……という実話力を感じさせる一本。ワルシャワ動物園には、一回行って見たいな!

”ナイフから包丁へ”『ミスター・ロン』(ネタバレ)


「MR.LONG/ミスター・ロン」予告編

 チャン・チェン主演作!

 六本木での暗殺の仕事に失敗した台湾の殺し屋ロンは、間一髪、田舎町に逃れて身を隠した。そこで心を閉ざした少年やその母親、気のいい住人たちに助けられたロンは、日本語もできないままに得意の料理で屋台を営むことに……。

 チャン・チェンが邦画に出演、ということで、ナイフ一本で標的を切り刻む、台湾の凄腕の殺し屋役。しかし仕事を請け負って日本に来たのはいいが、なぜかナイフがポッキリと折れて失敗、袋叩きにされるのであった……。
 危うく始末される寸前だったが、ボスに恨みを持つLDHが乱入したことでぎりぎり逃れて廃屋に逃げ込む。そこで近所の少年に野菜をもらって自炊生活を始めたところ、周辺の村の人たちが手を貸してくれて、台湾麺の屋台を出すことに……。

 チャン・チェン本人が「なぜこんなことに……」と言うこの設定からしてまああり得ないが、この後の展開も超絶的にファンタジー感を増して来る。SABU監督って初めて見たけどこんななのな。
 近所の少年の母親がシャブ中になっていて、村人にも「シャブ女」と呼ばれている。それには深いわけが……ということで、彼女とその男であるLDHの人が登場する回想パートが始まるのだが、これがまた映画の流れをぶった切ってめちゃくちゃ長い! LDHの人はチャン・チェンを結果的に助けることになりつつも死ぬのだが、この回想の方が遥かに出番長かった。製作側の大人の事情を勘ぐってしまうぐらいに長くて、そうでないならこの女の方が主人公なのであろうか、とさえ考えさせる。

 チャン・チェンはこの女にシャブをやめさせ、子供に屋台を手伝わせて生活再建の道筋を作る。自分も村人についでに廃屋を直してもらってしっかり住み着くことに。ここらへんは田舎の人情ということで、ホロリとさせるいい話ではある。が、そうしていい話げに撮られていつつも、三人が温泉に行ってお土産を買って来ても、「ロンちゃん」の周りには村人が群がるが、「シャブ女」は輪の外でガン無視されていたりする。ああ、田舎もんの排他性……。

 ファンタジックな展開と裏腹に、バイオレンスはしっかり撮られていて、人情の対極の暴力性が、まさにナイフのごとく突き刺さる。ナイフバトルは『アジョシ』でも見た数回刺して戦闘不能に追い込むスタイルで、ロンvsヤクザ軍団のクライマックスは、非情の殺し屋の本領が悲しくも発揮されて最高ですね。

 エンディングはまさにこの映画の全部を煮詰めたようになっていて、一人台湾に戻り殺し屋稼業を再開しようとしたロンのところに、村人たちが子供を送り届けて来る。まあ感動的なシーンで、ロンちゃん本人が「みんな、なんでこんなところに!?」と突っ込みつつ特に回答はないところがいいですね。ロンにとっても子供にとってもこれで良かったが、村人的には実は厄介払いしに来たのではないか、という気がするところも……。

 エンドロールを見たら、「野良犬」小林聡が出ていたらしいのだが、初見ではまったく気付かず。ヤクザ役のどれかかな……。もうちょっと役者としてもバリューがあれば、チャン・チェンのカミソリ八極拳とキックボクシングの対決が見られたかもしれない。

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”ハイエナと踊れ”『カンフー・ヨガ』


映画『カンフー・ヨガ』 本予告

 ジャッキーがインド映画とコラボ!

 古代、天竺と唐の争いによって失われた秘宝を求め、中国の考古学者ジャックと、インドの考古学者アスミタは協力して調査を開始。一枚の古い地図の謎を解き、秘宝の鍵となる「シヴァの目」を探す。だが、秘宝を追う謎の一味が迫り、チームにも裏切りが……。

 ワールドワイドに活躍するジャッキー、アジア圏においても韓国や日本の役者を起用して若手のフックアップを図っているのだが、今作ではついにインド進出と相成りました。
 近作『スキップ・トレース』ではロシア行ったりモンゴルを横断してたりしていたので、まあ今更どこへ行っても驚くことはないだろうと思うんだが、さあインドはどうかな……?

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 結論から言うと、まったくいつものジャッキー映画であり、前述のロシアやらモンゴルやらがインドに変わっただけだったな……。まったくジャッキー映画の文法を壊さず、『THE MYTH』(一応、これの続編らしいぞ)や『ライジング・ドラゴン』でもおなじみの宝探し系の新作として、「文化財を守ろう!」という熱い正論を語るジャッキーメッセージ。その中でちょいちょいと小技アクションを披露……。大掛かりな(と言っても数m飛んだり車の屋根に飛びつく程度だが)アクションは若手にやらせて、ジャッキー自身は決めどころでちょいちょい頑張る感じね。

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 ドバイで水着でオークションしたのちカーチェイスするあたり、激しく既視感を覚えるワイスピっぷりだったりするが、特筆すべきはインド描写で、笛吹いて縄を立てたり蛇を操ったり空中浮遊している行者の側で戦うあたり、さすがにちょっとベタ過ぎやしないか、フジヤマゲイシャレベルの扱いにインドの人は怒り出さないのか、と心配になってしまう。

 宝探しの達人だ!と持て囃されるたびに、「一介の学者ですよ」とたしなめるジャッキーの謙虚さこそが今作のテーマで、大量の金塊を前にしても「お宝に目が眩んではならない」と諭す。その割に資料価値高そうな古文書で人を殴ってたりするあたりが、やっぱりいつものジャッキー映画で最高なんですがね……。

 NGシーンはないんだが、クライマックスだけはインド映画らしく群舞で締める。いや、これを観るために100分観てきたような多幸感。登場人物もスタッフも全員参加で、悪役も改心?して混じっている。ダンスは途中でもうちょいやっても良かったかもしれないが、まあいいか……。

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“ガス室の穴"『否定と肯定』


映画『否定と肯定』予告

 ホロコースト映画!

 著書「ホロコーストの真実」で、イギリスの歴史家アーヴィングのホロコーストはなかったという主張を批判したデボラ・リップシュタットは、名誉毀損でアーヴィングから訴えられる。被告側に立証責任のあるイギリスでの裁判に、英国の腕利き弁護士たちが揃い、歴史的な戦いが始まった……。

 歴史学者リップシュタットが訴えられた実際の裁判を映画化。「ホロコーストは実際にあったのか?」論法というのは結構根が深くて、例えば全然関係ないように思える日本のTwitterでも、ちょいちょい「ガス室はなかった」と、今作のアーヴィングそっくりのことを言ってる人がいるのである。いったいどういう心情でドイツの話をしてるのかと思うが、返す刀で「南京大虐殺はなかった」「慰安婦はいなかった」とやりだすので、ホロコーストプロパガンダの産物である、という思考を、日本の戦争犯罪の問題にも適用しているのだな、とわかる。
 そういう意味では今作における歴史修正主義というのはまったく他人事ではなくて、本邦にも援用できる話でもある。そもそもアーヴィングはイギリス人で、ドイツと戦った国の人間なのにこういうことになるのだから……。

 リップシュタットはアメリカ人だが、裁判はアーヴィングの出身地であるイギリスで起こされる。講演会にアーヴィングがカチコミをかけてきた1994年から、実際に訴訟が起こされるまでは約二年。裁判が始まり、やがて佳境に入るまでさらに数年。控訴が却下されて判決が確定したのは2001年だから、相当に長いスパンの話。
 裁判自体も華麗なる逆転とは程遠い、地味かつ砂を噛むような論証が続くハードなものに。被告であるリップシュタット側に論証責任があるのだが、この論証の過程そのものに歴史を紐解く作業との共通性があるんじゃないかと思うね。
 リップシュタットを演じるのはレイチェル・ワイズだが、アメリカ人ということで言論には言論で対抗し、議論に徹底的に応じるのも辞さないぜ、というスタイル。要は短気で喧嘩っ早いのだが、イギリスの裁判のスタイルがアメリカと違うのと同様、イギリス人の喧嘩作法もアメリカ人とはまたちょっと違うのだ……。
 歴史修正主義者は法的に「与し易し」としてイギリスで裁判を起こすのだが、それは確かに一面的にはその通りなんだけど、「ちょっと待て、だからって通しゃしねえよ」と言うイギリス野郎どもの意地がうかがえる。

 ホロコーストはあった・なかったの二元論、つまり邦題『否定と肯定』状態に持ち込むことが修正主義者の狙いだが、リップシュタット弁護団の狙いは、あくまでアーヴィングの主張を突き崩し、彼の発言の不正確さや欺瞞を立証することである。複数の陪審員に裁かれるとなると、どんな価値観が持ち込まれるかわからないので、裁判長一人による審理に持ち込み、徹底的に証拠を突きつけていく。実話ではアーヴィングが裁判長に対し、うっかり「総統」と呼んじゃうひどすぎる展開があったそうだが、さすがにわかりやすくダメ過ぎたのか映画ではカット。致命的だろ……。

 リップシュタットさんが、なかなか弁護方針に賛同しきれずフラストレーションを溜める展開に、イラッとしがちな関西人もつい共感してしまうのだが、次第に戦術が功を奏していく感があり、さらに事務的に見えた弁護士たちの熱いハートも垣間見得たりして、徐々に納得と信頼を深めていくあたりがいいですね。
 しかし論証は好調だったが、判決直前、裁判官が「アーヴィングが捏造してるんじゃなく、本気で信じてるとしたら、それは故意とは言えないんじゃないか」と、とんでもないことを言い出す。あれだな、あまりにフルボッコにしすぎたせいで、相手が嘘や捏造を繰り返す「悪い」人間であることを証明するはずが、あまりに馬鹿げた間違いや矛盾が大量にあるから、わざとではなく本物の「バカ」なんじゃないか、と裁判官も思ってしまったのではなかろうか。バカだから本気で信じている可能性がある、と……。

 相変わらずお美しいレイチェル・ワイズ様だが、今回はいけてないスウェットなんか着てる学者を好演してて、短気さと知性のバランスが上手かったですね。アーヴィング役のティモシー・スポールは太った役が多かったのに今回はげっそりと絞り込み、思わず卵を投げつけたくなる憎たらしさで、こちらも最高の演技でありました。

 裁判の結果は史実の通りだが、その結果にも関わらずアーヴィングが懲りずに修正主義の言説を発し続けることも示される。彼らには歴史の学問的積み重ねや、法の場での論証などもどうでもいいし、ひたすら難癖をつけ続けることで『否定と肯定』に持っていけばそれでいいのだ。だが、我々もまた主張し続けるだけだ……。
 アーヴィングはその後、賠償金を払えず破産したり、オーストリアで逮捕されて「ナチスユダヤ人を殺した」と認めたりしていて相応に痛い目にもあったのだが、彼のやってきたことが消えたわけでもないので、逆にそこまで描かないラストにしたのかな。アーヴィングがいなくなったとしても、同じような言説を発する人間はごまんといるわけで、あくまで警鐘を鳴らし続けるわけだ……。

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)

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ホロコーストの真実〈上〉大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ (ノンフィクションブックス)

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ホロコーストの真実〈下〉―大量虐殺否定者たちの嘘ともくろみ

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2017年全鑑賞作品とランキング

 2017年は劇場では123回鑑賞となりました。去年より微増。

 鑑賞総額は125300円で、一本平均1019円。一番良く行った劇場はTOHOシネマズなんばで本館、別館合わせて31回。二番目はシネマート心斎橋の27回。妻と一緒に見たのは50本で、こちらは増えてますね。

 旧作2本、複数回鑑賞4回、ドキュメンタリー1本を除いた116本のランキングは下記。

 ワーストは最後の4つならどれでもいいんですが、やっぱりムカつき加減で選ぶと『シチリアの恋』がぶっちぎりですね。


 ベストフィフティーンはこちら。
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  1. 『お嬢さん』
  2. 『七月と安生』
  3. 『人魚姫』
  4. 『トリプルxXx:再起動』
  5. 『エル ELLE』
  6. 『新感染 ファイナル・エクスプレス』
  7. マンチェスター・バイ・ザ・シー
  8. 『ドラゴン×マッハ!』
  9. 『百日告別』
  10. 『光をくれた人』
  11. ゲット・アウト
  12. 『アイ・イン・ザ・スカイ』
  13. ダンケルク
  14. 『エイリアン・コヴェナント』
  15. 『グレートウォール』
  16. 女神の見えざる手
  17. 『ギフテッド』
  18. ハクソー・リッジ
  19. キングコング 髑髏島の巨神』
  20. 『ローガン』
  21. ベイビー・ドライバー
  22. パーティで女の子に話しかけるには
  23. 『修羅の剣士』
  24. 『77回、彼氏を許す』
  25. 『沈黙』
  26. ラ・ラ・ランド
  27. 『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』
  28. 『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』
  29. 否定と肯定
  30. 『ドリーム』
  31. 『マリアンヌ』
  32. 『ムーンライト』
  33. 『メッセージ』
  34. 『ブラインド・マッサージ』
  35. 『一念無明』
  36. 『哭声』
  37. 『トンネル』
  38. 『20センチュリー・ウーマン』
  39. 『ライフ』
  40. スター・ウォーズ EP8 最後のジェダイ
  41. 海底47m
  42. ワイルドスピード ICE BREAK』
  43. 『未来を花束にして』
  44. 散歩する侵略者
  45. 西遊記2 妖怪の逆襲』
  46. 『アシュラ』
  47. 『午後八時の訪問者』
  48. 『ミスター・ロン』
  49. 『スプリット』
  50. 怪物はささやく
  51. 『愚行録』
  52. マイティ・ソー バトルロイヤル』
  53. スパイダーマン ホームカミング』
  54. アフターマス
  55. 『おじいちゃんはデブゴン』
  56. 『オペレーション・メコン
  57. ディストピア パンドラの少女』
  58. 『ウィッチ』
  59. スキップ・トレース
  60. 『IT それが見えたら終わり』
  61. 機動戦士ガンダム THUNDERBOLT BANDIT FLOWER』
  62. カンフー・ヨガ
  63. スイス・アーミー・マン
  64. ノクターナル・アニマルズ
  65. 『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ
  66. 『ノー・エスケープ』
  67. 『たかが世界の終わり』
  68. 『金陵十三钗~戦火の華たち~』
  69. 『姉妹関係』
  70. 『ダブル・サスペクト』
  71. ユダヤ人を救った動物園』
  72. 『疾風スプリンター』
  73. 『ホワイト・バレット』
  74. 『私は潘金蓮じゃない』
  75. 『ミス・ペレグリンと奇妙な子供たち』
  76. 『ロボット・ソリ』
  77. 『コール・オブ・ヒーローズ』
  78. ブレードランナー2049』
  79. ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
  80. パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』
  81. 『善悪の刃』
  82. バーニング・オーシャン
  83. コードギアス 反逆のルルーシュ 興道』
  84. 『ラッキー』
  85. オリエント急行殺人事件
  86. ワンダーウーマン
  87. BLAME!
  88. 『スノーデン』
  89. 『29+1』
  90. レイルロード・タイガー
  91. 僕のワンダフル・ライフ
  92. 『LION』
  93. 『ソウル・ステーション パンデミック
  94. 『犯人は生首に聞け』
  95. 虐殺器官
  96. ゴジラ 怪獣惑星』
  97. ドクター・ストレンジ
  98. マグニフィセント・セブン
  99. パッセンジャー
  100. ジョン・ウィック チャプター2』
  101. 『美しい星』
  102. 『ロスト・レジェンド』
  103. 猿の惑星 聖戦記』
  104. 『フラットライナーズ』
  105. 『スカイ・オン・ファイア』
  106. 『52hz,I love you』
  107. 『ミセスK』
  108. パワーレンジャー
  109. 『封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド』
  110. 『バイバイマン』
  111. 『コンビニ・ウォーズ』
  112. 機動戦士ガンダム Twilight AXIS
  113. 『ジグソウ ソウ・レガシー』
  114. バイオハザード ヴェンデッタ
  115. リングサイド・ストーリー
  116. シチリアの恋』


 旧作鑑賞は2本。

『クーリンチェ少年殺人事件』
ブレードランナー ファイナルカット


 自宅鑑賞は22本でした。

『クロノス』
バイオハザード
屍者の帝国
魔法少女まどかマギカ 前編』
魔法少女まどかマギカ 後編』
『劇場版エヴァンゲリオン AIR/まごころを君に
ストレイン』シーズン3
『こねこ』
戦国BASARA
『無垢の祈り』
ウルヴァリン:SAMURAI
ツイン・ピークス 序章』
『セトウツミ』
『オクジャ』
『お嬢さん』エクステンデッド版
ツイン・ピークス
『ハプニング』
ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』
『ビリー・リンの永遠の一日』
『ウルフ・オブ・ウォー』
『グレート・ウォール』
ストレイン』シーズン4

”罪を乗せて”『オリエント急行殺人事件』


映画『オリエント急行殺人事件』予告編

 アガサ・クリスティ原作!

 トルコからフランスへと向かう寝台列車オリエント急行。名探偵エルキュール・ポアロはマフィアの男から護衛の仕事を持ちかけられるが、きっぱりと断る。だが、翌朝、客車内でその男が滅多刺しになって殺されていた……。犯人は乗客の中にいる?

 クリスティは『そして誰もいなくなった』と『アクロイド殺し』ぐらいしか読んでいないのだが、今作の原作は読んでいないにも関わらず、あまりに有名すぎてオチだけ知っているという残念なパターン。確か、「世界のミステリ小説をマンガで紹介!」みたいな本で読んだような気がする。時々『Xの悲劇』と混同してしまうんだが……あれはバスだったかな?

 超豪華セットによる寝台列車と食堂車の旅、ということで、いや昔の話とは言え憧れますな。一度、こんな旅をしてみたい! 日本ではもうブルートレインなくなっちゃったし、中国やインドに行けば距離だけは長い列車の旅は出来るんだろうが、こんなゆったりは無理だろうな。しかし、そんなこんなで余裕こいてると殺人が……。

 あからさまに悪どい顔をしたブラック・スキャンダルなギャング、ジョニー・デップが滅多刺しにされて殺され、車内に犯人がいるのは疑いないということに……。
 途中の犯人探しパートが、単に顔を付き合わせて順番に喋るだけで少々かったるいのが難点で、性質上、第二の殺人がないというのもちょっと苦しいところ。
 また映像化すると、電車の空間が視覚的に把握できるので、第三者が潜んでるとか無理だろ、とか、他の人の目を全部盗んでこっそり殺人とか無理だろ、という気がどうしてもしてしまう。ミシェル・ファイファーさんが途中で刺された話とか、露骨に狂言臭いし……。

 映画の肝は、「最後の晩餐」を模した構図で紐解かれる犯人探しなので、そこでみんな人が変わったように大熱演になるのも、ミシェル・ファイファーさん的には、途中のわざとらしいあれはいったいなんやねん、という感じがしてしまうのな。
 そんな中、出てきた瞬間、眼光が異様すぎるセルゲイ・ポルーニンが謎で面白すぎ。そして、なんだあの身のこなしは……。

 オチは知っていたけれど、改めて力のある絵で見せられるとなかなかに衝撃的で堪能。これは『親切なクムジャさん』にも影響を与えたのかな。

 ところで、見事にトリックを暴いたとは言え、犯人は捕まえなかったポアロさん。これ、経歴的には汚点になったんじゃないの? 翌日以降の新聞に「ポアロ、迷推理! 犯人は通り魔?」「ポアロ、犯人を挙げられず! 寝台車で熟睡」「どうした、名探偵。悄然と去る」とか散々書き立てられそうで気の毒である。
 でもナイルで汚名返上するよ! ということで気を取り直して去る、というラストもイマイチ締まらない感じで、ここは物悲しい余韻を残して終わっても良かったんではないかな……。

”ある愛の終わり”『ノクターナル・アニマルズ』


『ノクターナル・アニマルズ』予告

 トム・フォード監督最新作!

 20年前に別れた元夫から送られてきた、一冊の未発表小説。『夜の獣たち』と題されたそれはその暴力性と裏腹な美しさでスーザンの心を捉える。今になってそれを送ってきた夫の真意とは?

 オープニングの超デブから度肝を抜かれる。その突飛なビジュアルも確かに凄いんだが、美術が物凄く行き届いていてびっくり。エイミー・アダムスの家のオシャレさにも圧倒されるが、ひけらかしてる感じもないのよね。こんな家にこんな格好で本当に住んでるのかよ、生活感は……と思いかねないところだが、実に自然に撮っていて、そんな意識をさせない。たぶん、トム・フォード自身はほんとにブランドで固めて、こんな家にさらっと住んでるんだろうな……。

 そんなピカピカのおうちから一転、別れた夫ジェイク・ギレンホールの送りつけてきた小説の舞台は荒涼たるど田舎に。ああ……もっとブランド物を見ていたかったわ……と思わないでもなかったが、ここでも撮影が決まりまくっていて、妻子を奪われぽつねんと取り残されたギレンホールの侘しさよ。
 この小説を映像化したシーンは、エイミー・アダムスが登場人物の「夫」に自分の夫を投影して見ているのだが、「妻」役は自分ではないのよね。これはもう別れたから、ということなのだが、では夫の方はそれでいいのかというと、これも違うのでは、と思える。
 別れた妻としては、「才能がない」と見下していた元夫が送ってきた小説を読んだら思わず引き込まれてしまい、かつて捨てたことへの「復讐」として送ってきているのではないか、と思わず解釈してしまう。俺はこんな凄いものを書けるようになったんだ……!
 が、これが本当に面白い小説なのかはちょいと微妙で、筋は単純だし、ケッチャムみたいないやな筆致になってるかはよくわからない。ギレンホール夫は夫で、「あいつは芸術のわからない女」と思ってる節があるし、仮にすごい小説が出来てたとしても、送って理解されるものと思ったのであろうか?

 読み進めるにつれて、元夫の意図を想像してメンタルが揺らぐエイミー・アダムス。彼女自身の生活や今の家庭もかなり問題を抱えていることがちょいちょい挿入され、いつしかピカピカのブランドも空虚さに満ちて見えてくるのである。
 ローラ・リニーお母さんと、エイミー・アダムスの現在のだぶり感。アミハマ夫の顔ばっかり感よ……。

 小説内に登場するチンピラをやってるキック・アスことアーロン・テイラー・ジョンソンが、相変わらずのイケメンながら中身ゼロのモンスター男を熱演。このルックスの良さがブランドものの美しさと被るのだが、その彼が野外でウンコしてケツを拭くシーンがなんとも言えず小汚くて最高である。ウンコ自体を映像で観るより、ウンコを拭いた紙を観る方が汚く感じる心理はいったいなんなのだろうね。

 「物語」から、もちろん人は読みたいものを読み取るわけだが、一方で読みたくないものを読み取ってしまい、なおかつそれを認められないという心理があり、それは時に書き手の意図とも大きくずれてすっ飛んで行ってしまうのかもしれない。
 わざわざ家まで原稿持ってきて投函したギレンホール夫の心理も計り知れないわけだが、彼に対する罪悪感と自己正当化がごちゃまぜになって、エイミー・アダムスは彼との再会を選択する。
 この二人の関係、取ってつけたような堕胎がなければ、ごくごく平凡な別れだったんでは、という気がする。その当時は腹を立てたかもしれないが、振り返ってみたらそこまで執着し合うのか?という……。
 何がしか深い意図や計画性を期待するところだが、オチはそういうつき方はしない。ブランドと砂漠、執着心と猜疑心、揺れる形なき愛憎……そういった過程こそが肝なのではないかな。

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