今日の買い物

メダリオン』BD

 DVDから買い換え。ジャッキーコレクション。


燃えよデブゴン7』BD

 デアゴスティーニ。デブゴンはテレビ放送があったのを中心に何本か見ているが、どれがどれだったか……?


羊たちの沈黙』BD

 あまり画質いいソフトじゃないんだが、他の二作と並べたいので……。

2016年読了本

2016年の読書メーター
読んだ本の数:45冊
読んだページ数:9469ページ
ナイス数:11ナイス

昨日の海は昨日の海は
読了日:1月6日 著者:近藤史恵
薔薇の足枷 (幻冬舎アウトロー文庫)薔薇の足枷 (幻冬舎アウトロー文庫)
読了日:2月12日 著者:大石圭
残穢 (新潮文庫)残穢 (新潮文庫)
読了日:3月10日 著者:小野不由美
七帝柔道記 (角川書店単行本)七帝柔道記 (角川書店単行本)
読了日:3月20日 著者:増田俊也
殊能将之 未発表短篇集殊能将之 未発表短篇集
読了日:3月26日 著者:殊能将之
機動戦士ガンダムUC11 不死鳥狩り<機動戦士ガンダムUC> (角川コミックス・エース)機動戦士ガンダムUC11 不死鳥狩り<機動戦士ガンダムUC> (角川コミックス・エース)
読了日:4月1日 著者:福井晴敏,虎哉孝征
ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)
読了日:4月23日 著者:安田浩一
隣り合わせの灰と青春 (幻想迷宮ノベル)隣り合わせの灰と青春 (幻想迷宮ノベル)
読了日:4月25日 著者:ベニー松山
野ざらし忍法帖 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(2) (ちくま文庫)野ざらし忍法帖 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(2) (ちくま文庫)
読了日:4月26日 著者:山田風太郎
忍者六道銭 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(10) (ちくま文庫)忍者六道銭 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(10) (ちくま文庫)
読了日:4月26日 著者:山田風太郎
幸せスイッチ (光文社文庫)幸せスイッチ (光文社文庫)
読了日:4月28日 著者:小林泰三
不死王 (幻想迷宮ノベル)不死王 (幻想迷宮ノベル)
読了日:5月1日 著者:ベニー松山
スーツケースの半分はスーツケースの半分は
読了日:5月2日 著者:近藤史恵
ジェーン・スー 相談は踊る (一般書)ジェーン・スー 相談は踊る (一般書)
読了日:5月3日 著者:TBSラジオ「ジェーン・スー相談は踊る」
剣鬼喇嘛仏 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(12) (ちくま文庫)剣鬼喇嘛仏 ――山田風太郎忍法帖短篇全集(12) (ちくま文庫)
読了日:5月5日 著者:山田風太郎
野火 (新潮文庫)野火 (新潮文庫)
読了日:5月22日 著者:大岡昇平
見えないほどの遠くの空を見えないほどの遠くの空を感想
自意識自意識自意識で大変良かったが、きっと映画で見たらすごく小っ恥ずかしかったんじゃなかろうか。
読了日:5月28日 著者:榎本憲男
蜘蛛と蝶蜘蛛と蝶感想
作者らしい無残さの中に悲しさが溢れる話。相変わらず後書きが本編より感動的。
読了日:6月1日 著者:大石圭
こなもん屋うま子こなもん屋うま子感想
大阪に住んでる、あるいは馴染みがある食べる人々にはたまらないんちゃうかな、と関西弁でツイートしたくなる。なんやしらんイヤなこと(仕事やら同僚やら顧客やら)もあるけど食わな働かれへんしなぁ、という人々の日常。いやほんま好きやこれ。
読了日:6月7日 著者:田中啓文
使える筋肉・使えない筋肉 実技編―強くて使える筋肉をつくるトレーニング法120使える筋肉・使えない筋肉 実技編―強くて使える筋肉をつくるトレーニング法120
読了日:6月11日 著者:谷本道哉
Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話Kindleのまとめサイトでどうにかこうにか1000日間生計をたてた話
読了日:6月12日 著者:きんどうzon
モップの精は旅に出るモップの精は旅に出る感想
自転車レース『サクリファイス』シリーズと並ぶ、掃除の素晴らしさがわかる著者の代表的シリーズがついに完結。夫婦のあり方についても深く考えさせられた。 連載始まって19年、著者もあとがきでその年月を語ったが、オレも二十歳から結婚しアラフォーになった。でも、一作目を読んだ時の気持ちには、何も変わりないよ。
読了日:6月18日 著者:近藤史恵
H.G.ウェルズ短篇集〈第3〉モロー博士の島 (1962年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)H.G.ウェルズ短篇集〈第3〉モロー博士の島 (1962年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)
読了日:6月22日 著者:
あぶない叔父さんあぶない叔父さん
読了日:6月26日 著者:麻耶雄嵩
ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
読了日:7月2日 著者:細川貂々
その後のツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)その後のツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
読了日:7月2日 著者:細川貂々
7年目のツレがうつになりまして。 (幻冬舎単行本)7年目のツレがうつになりまして。 (幻冬舎単行本)
読了日:7月2日 著者:細川貂々
スティグマータスティグマータ
読了日:7月6日 著者:近藤史恵
黒猫遁走曲 角川文庫黒猫遁走曲 角川文庫
読了日:7月8日 著者:服部まゆみ
皆殺し映画通信 冥府魔道皆殺し映画通信 冥府魔道
読了日:7月17日 著者:柳下毅一郎
地獄行きでもかまわない (光文社文庫)地獄行きでもかまわない (光文社文庫)感想
編集が優秀なのか、大石圭の光文社から出る本は、新機軸だったりどこかしら毛色が違ったり、角川ホラー文庫作品と色分けしつつ一味違うものを持ってくる。今作もその例に漏れず。 ところで、預けられた金を本当に嘘じゃなくどこかしらで運用すれば、もうちょっとなんとかなったんではないか、と疑問に思ったが……?
読了日:8月6日 著者:大石圭
もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く (講談社+α新書)もう「東大話法」にはだまされない 「立場主義」エリートの欺瞞を見抜く (講談社+α新書)
読了日:8月12日 著者:安冨歩
エスカルゴ兄弟エスカルゴ兄弟
読了日:9月13日 著者:津原泰水
優雅なる監禁 (角川ホラー文庫)優雅なる監禁 (角川ホラー文庫)
読了日:9月14日 著者:大石圭
希望の格闘技希望の格闘技
読了日:9月17日 著者:中井祐樹
こなもん屋うま子 大阪グルメ総選挙 (実業之日本社文庫)こなもん屋うま子 大阪グルメ総選挙 (実業之日本社文庫)
読了日:10月3日 著者:田中啓文
高慢と偏見とゾンビ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)高慢と偏見とゾンビ (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)感想
面白さの大半は原典に依存している単なるパロディ小説。映画はお話までひねってまあまあ頑張っていたな。
読了日:10月25日 著者:ジェイン・オースティン,セス・グレアム=スミス
入門 犯罪心理学 (ちくま新書)入門 犯罪心理学 (ちくま新書)
読了日:10月27日 著者:原田隆之
映画の生体解剖 vs 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!: 映画には触れてはいけないものがある映画の生体解剖 vs 戦慄怪奇ファイル コワすぎ!: 映画には触れてはいけないものがある
読了日:11月2日 著者:稲生平太郎,白石晃士,高橋洋
安楽探偵 (光文社文庫)安楽探偵 (光文社文庫)
読了日:11月6日 著者:小林泰三
最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』 から 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 まで最も危険なアメリカ映画 『國民の創生』 から 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 まで
読了日:11月7日 著者:町山智浩
風よ。龍に届いているか (幻想迷宮ノベル)風よ。龍に届いているか (幻想迷宮ノベル)
読了日:11月21日 著者:ベニー松山
「あの戦争」を観る! 戦争映画大特集 【文春e-Books】「あの戦争」を観る! 戦争映画大特集 【文春e-Books】
読了日:11月25日 著者:半藤一利,山崎努,春日太一,町山智浩
のぞきめ (角川ホラー文庫)のぞきめ (角川ホラー文庫)
読了日:12月10日 著者:三津田信三
時をかける少女 (角川文庫)時をかける少女 (角川文庫)
読了日:12月26日 著者:筒井康隆

読書メーター

”父の動画と母の写真”『母の残像』


映画『母の残像』予告編

 トリアー監督作?

 戦争写真で著名となった母イザベルの死から三年。彼女の業績を振り返る写真展が開かれることに。長男のジョナは、父と弟の暮らす家に戻り、展示する写真を選ぶことに。彼女の死が自殺の可能性もあることは、当時幼かった弟には知らされておらず、ジョナと父は新たに浮かび上がってきた事実に苦悩するのだが……。

 トリアーはトリアーでも、鬱病監督ラース・フォンじゃなくて、甥っ子のヨアキム・トリアーが監督。何者だ……。

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 戦場カメラマンで、引退直後に交通事故で亡くなった「母」をイザベル・ユペール。残された元俳優の夫をガブリエル・バーン、長男をジェシー・アイゼンバーグが演じる。冒頭は病院、妻の出産に立ち会った直後のジェシー、妻のための食べ物を探しに売店を探してガン病棟まで迷い込み、そこで母親の死に立ち会った元カノと再会。「どうしてここに?」「いや、妻がね……」と、元カノに出産の話をするのがバツが悪く言葉を濁したせいで、妻がガンなものと勘違いされてしまう。『暗戦』を思い出したが、いきなりギャグから入ってきたな……。

 回想や写真、あるいは邦題通りの「残像」のように現れるユペール母だが、残された夫、長男、次男がそれぞれ人生において感じている欠落感が、彼女の不在とリンクして感じられる。
 今になって夫婦関係に悩む夫、両親の関係と自分の家族への立ち位置に悩む長男、マザコン気味なまま青春に対峙する次男……と、夫婦もの、家族もの、青春ものを母一人でリンクさせてしまうなかなかアクロバティックな映画で、死してなお存在感を発揮してそれを成立させるユペール力。「父の残像」にしたら、誰だと成立するかな……? メル・ギブソン鬱病映画『それでも愛してる』に似ているかな。

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 ガブリエル・バーンお父さんは元俳優で、今は何してるのかよくわからない。次男とはコミュニケーションが取れず、彼の高校の女教師と付き合い、長男とは会話は成立してるけど彼の抱えてる悩みには全然気づいていない。
 一番しっかりしてそうな長男ジェシー・アイゼンバーグがいつもの早口キャラで、弟とも仲が良く、オタクをこじらせ気味な彼にアドバイスを送る。が、子供が生まれたばかりなのに母の写真展のために生家に戻ってきているのは、妻子からの逃避なのだな。で、冒頭で再会した元カノと浮気したりして、まったく父親になる準備ができていない。自分の両親は全然ロールモデルにならないし、写真を整理してる最中に、母の不倫の証拠を見つけてしまう。
 そして次男はデヴィン・ドルイドという若手。華のないローガン・ラーマンぐらいの印象の顔だが(こういう顔、最近多いな……)、有名俳優じゃないし出番少なめかと思いきや、ほぼ主役。母を失い、オンラインゲームにハマってるけど女の子とは仲良くなりたい童貞……。何者にもなれないでいる苛立ち、自分を表現したいという気持ち、そして他人とのコミュニケーション、それらが自分の中でごちゃまぜになり区別がつかなくなっているような……。彼の青春もの的な物語が主軸になり、他の二人とも密接に絡まりあって、切れかけた家族の関係を浮かび上がらせる。それぞれのワンエピソードは一見、点のようなんだけれど、次第につながりが浮かび上がり、その中心にあるのが亡き母の残像……。

 ネット中毒の弟が昔の動画を漁り、兄に見せるところが爆笑もので、俳優時代の父が2枚目っぷりを発揮しているシーンを見て、「おえーっ!」とか言うのだが、そのシーンが特別面白いというわけでないのに、自分の父親がキラキラした演出でこんな風に登場したら、確かにキモいかも、と想像させる。わかったようなわからんような笑いで、しかもこの映像はオリジナルではなく、ガブリエル・バーンが昔出ていた『hello again』というコメディ映画で、youtubeにもほんとにフルで上がっている。本物はアカデミー賞ノミネート俳優だというのに、なんという扱いだ!


Hello Again (1987) Best Comedy / HD [1080p]

 そのお父さんが息子とコミュニケーションを取ろうと同じオンラインゲームを始め、広大なオープンワールドを探し回ってやっと見つけた、と思ったら速攻で殴り倒されるところも爆笑。

 そんなこんなでなかなか笑かしてくれるし、繊細だけど叔父さんとは全然タッチが違うな……と思ってたら、最後に野ションベンシーンをぶち込んでくれて「トリアーの遺伝子」をきっちり感じさせてくれたのでありました。しかしこいつは七光りではないな……。幅広い年代の心の機微をユーモアですくい取る手腕が巧み。次回作も要注目ですよ。

ヴィオレッタ [Blu-ray]

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主婦マリーがしたこと [DVD]

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今日の買い物

アナコンダ』BD

 実は豪華キャストなモンスター・パニック。蛇か!? ジョン・ボイトか!?

”しみじみニヤニヤしとるんじゃ”『この世界の片隅に』


映画『この世界の片隅に』予告編

 こうの史代原作の漫画を、クラウドファンディングで映画化。

 生まれ故郷の広島・江波を離れ、軍港のある呉の北条家に嫁いできた18歳のすず。太平洋戦争は激化し、呉にも爆撃が迫る中、それでも日常は続く。そして昭和20年がやってくる……。

 能年玲奈が主演声優を務めるがメディア露出が思うようにいかず、果たしてヒットするのかと思っていたが、判官贔屓プラス口コミがうまくはまったか? 好調のようで何より。

 広島で生まれ呉に嫁いだ少女、すずの幼年時代から戦後までを描く。とにかく原作が素晴らしくて、当時の文化や風俗を繊細なタッチで描きつつ、戦時中に生きるすずというキャラクターの日常を克明に見せることで、まさにその時代の一風景を、身近なものへと感じさせる。
 その臨場感をいかに再現するか? いや、臨場感を再現する手法はあっても、この絵柄を維持しつつ、アニメで動かして、というのはなかなか難しいんじゃないの、と思っていたところ。ところが動く動く、単に中割りをしているというレベルではなく描き込みながらそれでいて絵柄と世界観を崩さず再現して見せる。

 さすがに尺の問題か、カットされているエピソードもいくつかあったが、「りんさん」絡みだけはダイジェスト的に再現。途中で展開変えて縁が切れたみたいに終わっていたので、パラレルワールドのようだったが、これはこれで上手いと思う。

 主演の声を当てているのは能年玲奈。正直、ああ台本読んでるな……と思った部分もあったが、天然イメージのキャラをうまく当て込んだな。ベストアクトは楠公飯のくだり。
 ただ、原作で言うと下巻のあたり、随分大人びた表情が描かれていたあたりに入っても、そういった成長のニュアンスが薄れ、ふわふわしっぱなしにも見えたのは、アニメのデフォルメのさじ加減か。また、ちょっと能年自身の表現力にも手に余ったのでは、という気がする。
 そういった諸々の事情は想像されるが、「ゆるふわなすずさん」という表面的なイメージが強調されてしまったのは少々残念でもある。

 爆撃が始まって後のダイナミックさは素晴らしいし、姪の死のシーンの処理は、その直前がわかりやすくしようとして回りくどくなっていたが、唸らされたところ。反面、ミリタリー描写にどことなく匂うフェティッシュさは、少々鼻につくものも。
 さらにニュアンスが違うところとしては、憲兵隊のくだりなどはコミカルに処理してあるものの、実際に威圧的なでかい声を耳で聴くというのはかなり笑えない不快感を催すものだ、ということを実感し、ここには漫画版にはないリアルさを感じたし、逆にあれは漫画ならではの非現実的なデフォルメだったのでは、とも思ったな。

 憲兵隊、前線で戦う兵士への妻の提供、もちろん爆撃など、終始おぞましいことが起き続けているのをユーモアでかわしていくというのは、一つのアプローチとしてわかるが、受け手がそのおぞましさを前提として理解していないと、正面から怒ったり拒否したりする態度よりもすずさん的のほほんさこそがいいんだ、というおかしな結論にたどりついてしまわないか。この十円ハゲまでこさえているにも関わらず日常を受け入れていくあたりが、まさに当時の女性の地位であり、その受け入れようそのものが、実に日本的であるなあ。大筋では我慢してその立場を受け入れると共に、声高に主張するのではなくふんわりとユーモアに包んで発信すべし、という姿である。そこを義姉の「モガ」キャラでバランスを取っているわけだが、そのバランス感覚そのものもまた日本的ですね。

 すずさんは決して聖女ではなく、かくあるべき理想像などでは決してなく、この時代を生き女性の一人であり、その日常も戦時のある一面に過ぎない。彼女の日常が尊いのは当然だが、それならば現代を生きる我々の、映画見たりダラダラしたりしている日常も尊いし、誰であろうとこの世界の片隅を生きている。一方で、我々先進国の住民が途上国からの搾取の上に成り立っているのと同じく、すずさんもまた第二次大戦における日本人の加害性とは無縁でいられない。

 筋を知らずに原作漫画を読んでいた時は、すずさんが原爆で死ぬのかな、と恐れおののいていたし、そうならずに終わってホッとした反面、改めて読み直し映画も見ると、原爆関連の描写は随分あっさりとし、省略されているようでもある。映画においても描写の取捨選択は少なからずなされているわけで、大変に雄弁な描写がある反面、当時の広島、呉にあったはずの語られなかったもの、原作者や映画の作り手が拾えなかったもの、掬い取らなかったものは無論ある。

 今作は良く出来た映画だと思うし、あの太平洋戦争を描く一つのアプローチとしても反戦映画としても優れているのは間違いないが、スタンダードであるともそうなるべきとも思わないし、手放しで褒める気にはならない。あくまでバリエーションの一つだろう。見事な描写も多いが、「これがこの時代の日本だ!」と力みかえって言われるとシラけてしまう。

 くどくど書いたが好きな部分も多くて、それはストーリーや歴史とは関係ないちょっとした台詞だったり表情だったり、そんなところですね。広島や呉にも行って見たくなるし、過去に想いを馳せるきっかけとしては良かろうという一本でありました。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

”投げる、揉む、殴る”『シークレット・オブ・モンスター』


『シークレット・オブ・モンスター』予告

 独裁者映画?

 ヴェルサイユ条約締結直前の1918年フランス。条約のために送り込まれたアメリカ政府高官、その美しく信仰心厚い妻、そして天使のような美貌の少年……。だが、少年は暴力的な衝動を発露し、両親に不満と苛立ちをぶつけ続ける。彼の心の奥には何があるのか? そして運命の夜がやってくる……。

 なぜ独裁者は誕生したのか? ……と予告で言ってたので、まあそういう話として観たわけだが、仮に予告を観てなければ「?」となっていたかもしれないなあ。

 第一次大戦後のドイツの処遇を巡る平和条約締結寸前から物語は始まる。四章に分けて構成され、最初の三章で少年のキャラクターと、独裁者への軌跡が描かれる。
 天使の格好をしてるのに、いきなり人に石をぶつけまくる暴力性が発露し、親や牧師に屈辱的な折檻を受ける。美しい家庭教師の透け乳首に興味を持ち、授業中にいきなり乳揉みしてまた怒られる。政府の高官が来ているのに家中を裸でウロウロし、また折檻されて腕を折られる。ついには神への祈りを拒否し、母親を石で殴り倒す。
 大雑把にピックアップするとこんなところで、その裏には父親の愛情の不在、母親の抱える後ろめたさと秘密がある、ということが浮かび上がってくる。

 見終わった後から俯瞰してみると、それなりに構造も見えてくるのだが、見てる間は拍子抜けで、この後何が起こるのか? 子供が癇癪! 天使ちゃんが悪魔くんに! みたいなお怒り劇場が続き、これと独裁者といったい何の関係があるの……?と思ってしまったところ。少年の出自や環境、あるいは生来のもの、それらが複雑に絡み合ってやがて独裁者を生んだ……とまあそういうことなんだろうが、映像こそ美しいが思わせぶりなだけで映画的にインパクトを残す部分がないので、どうしてもぼんやりとした印象になってしまう。

 ところで『アルスラーン戦記』という田中芳樹の小説があって、最近アニメ化などもされているが、あれも似たような設定で、両親と血の繋がりがなく愛情を受けていない少年が主人公だったのだよね。彼はまさにそれゆえに、暴君ではなく人の痛みがわかる良き統治者になり奴隷制度廃止を志す。
 今作は同じく親の愛情を受けていない少年が、逆に暴君、独裁者になるというお話で、それは本当に単に「設定」でしかないのだな。実際にそうなっていく過程がいかにもそれっぽく描かれているようで、石投げに乳揉みではちょっと薄っぺらに過ぎないか……。公式サイトの監督コメントを読んだら「あんなに髪型にこだわっていたナルシストだったのに、大人になったらハゲてて皮肉だ」みたいなことが書かれていて、すごく表層的ですね……。

 第四章では独裁国家が誕生してるんだが、第一次大戦後にどうやってそんな国が誕生したのだろう、ということは綺麗にすっ飛ばされているし、少年がどうしてその地位についたのかも謎である。もちろん、ヒトラーを念頭において見るべきなのだろうが、ヒトラーの生い立ちはもうちょいリアルな映画になるだろうよ。
 最後の二役目パティンソンが出てくるところは、ものすごい驚かせどころ!だったと思うのだが、如何せん少年時代が全然パティと似てないので、実は独裁者は少年じゃなく、思わせぶりに登場してた一役目のパティンソンがそのまま偉くなったのかと思ってしまったよ。そう思われないように、プレスコットという名前を呼ぶシーンとかで工夫してるんだと思うが、もう少しキャラ立ちがないとインパクトに欠ける。

 作り手には絵作りなど何がしかの才能はあるんだろうが、ストーリーテリングに結びつかずキャラも立たず揺さぶられるものがなかったな。スコアの暴力的なパワーに対し、腰砕けの映画でありました。

戦旗不倒  アルスラーン戦記15 (カッパノベルス)

戦旗不倒 アルスラーン戦記15 (カッパノベルス)

アルスラーン戦記1王都炎上 (らいとすたっふ文庫)

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今日の買い物

『RUSH』BD

 公開時の感想。
chateaudif.hatenadiary.com


霊幻道士2』BD

霊幻道士2 キョンシーの息子たち! 〈日本語吹替収録版〉 [Blu-ray]

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 これは未見。キョンシーが現代に!


霊幻道士3』BD

霊幻道士3 キョンシーの七不思議〈日本語吹替収録版〉 [Blu-ray]

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 こちらは劇場で見た。ラム・チェンイン様……!